第二話
しばらく行くと、開けた場所に辿り着いた。
あたしらを誘導していた者とは別の者が茂みから姿を現す。
「おうおう、てめぇら。のこのこと、ここまでついて来て余裕そうだなぁ?」
指をボキボキと鳴らしながら、やたらと図体のデカい男が見下ろしてくる。
他の盗っ人仲間は様子を伺っているのか、姿を見せない。
「そういうお前は、あたしの前に姿を現したことを後悔することになるぞ」
「ああ? 嬢ちゃん、虚勢を張ってられるのも今のうちだぜぇ?」
ニタニタと嫌らしい目つきで見てくる大男に、横にいる縁は顔をしかめる。
その時、木の上で姿を隠していた菜々桜が声をあげた。
「前方に三、後方に五!!」
彼女の声を合図に、縁が素早く目前の大男の首に噛みついた。
「ひっ!?」
「親方ぁぁぁ!」
大男が襲われたのを皮切りに、他の盗っ人らが一気に茂みから飛びかかってくる。
確かに菜々桜の言う通り、前方から三人、後方から五人が姿を現した。
「目をつけた相手が悪かったね。この鬼ヶ崎華様があの世に送ってやるよっと!!」
背負っていた愛用の金棒を手に取り、振り回す。
大男に噛みついている縁に襲いかかろうとする二人を薙ぎ払う。
背後では冬夜が疾風を巻き起こしながら、後方の五人を二刀流の爪でなぎ倒していく。
「ひゃひゃひゃっ! 弱ぇな、おめぇらっ!?」
冬夜が走り去った後には、一人また一人と盗っ人が地面に崩れ落ちる。
すると、ぼん、ぼぼんっと白い煙が次々に立ち上がり、人の姿に化けていた狐の姿が露わになった。
「意外と呆気なかったっすねー」
「相変わらず、あんた達って化け物よね」
冬夜の声に被さるように、菜々桜が木の上から飛び降りてきて、伸びている狐たちを見つめる。
「お褒めの言葉をありがとう」
「いや、別に褒めてないわよ」
菜々桜は礼を言うあたしを見て、嫌そうな顔でそっぽを向く。
縄で狐たちを縛り終えた縁が声をかけてきた。
「姫様、盗まれたものは全て回収しました」
「ありがとう」
「どうやら、こいつらのアジトはこの森じゃないみたいっすね」
冬夜が泡を吹いている先程の大男の頬を爪でツンツンとつつく。
「へぇ。ひとまず、縁と菜々桜。盗まれたものを村人たちに返してきて」
「はぁ? 誰がそんな面倒臭いこと……」
「菜々桜、行きますよ」
「あ、待ってぇ、ゆーくん!!」
縁の一言にころりと菜々桜は態度を変える。
白髪のポニーテールを揺らしながら、縁の後を追いかけて行った。
彼らを見送り、冬夜と二人で縛った狐たちを一箇所に集める。
「ったく、こいつら弱すぎて物足りねぇ」
「縁たちが戻ってくるまで、いつものやるか?」
「いいっすね!」
冬夜が嬉しそうに両手の爪を出して、構えを取った時だった。
突然、強風が吹きつけ、上空からバサバサと羽音が響き渡る。
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