鬼姫は烏天狗の末裔に求愛されまくって、困ってます!?
玉瀬 羽依
第一章 突然の求婚
第一話
「待ちやがれっ、そこの野郎ども!」
あたし、
つい、いつもの癖で口調が荒っぽくなってしまった。一応、これでも鬼の血が流れる人間族の「
「姫様っ!! 言葉遣いには気をつけてください!」
綺麗ないぶし銀髪から犬耳を覗かせている男、
彼は送り狼を先祖に持つ。だが、その見た目によらず、細かいことにこだわるので周りからは「小言男」と呼ばれている。
「今はそれどころじゃないってのに!」
縁の小言を聞いている暇はない。
盗っ人たちは、いつの間にか散り散りになったようで、前方には一人だけが懸命に走っていた。そのまま、森の奥の方へ逃げ込む。
否、
「その手に乗ってやろうじゃないの」
「はぁぁぁ。本当にあんたって、面倒臭いことに首を突っ込むのが好きよねぇ?」
突如、背後からやけに艶のある皮肉じみた声が聞こえてきた。
振り返れば、七つの尾をゆらゆらとさせている猫耳少女がついて来ていた。
彼女は猫又を先祖に持つ、
つり目がキッと睨んでくる。こちらも負けじと睨み返す。
「見過ごす訳にいくかっ! 善人な村人に盗みを諮る輩なんて」
「だから、姫様! 言葉遣い!!」
「姫様、姫様ってうるさいっての!」
怒りに任せて、口答えしていると縁は大仰にため息をつく。
「いつ如何なる時でも、上に立つ者として言葉遣いぐらいは気をつけるのが高貴な方と言うものです」
「さっすが、ゆーくん! 今日も月夜に輝いて髪ツヤが最高だわぁ」
「ひゃひゃっ! 姐さん、相変わらず空気を読まないっすね」
「バカなあんたに言われたくないわよ、
菜々桜が全身の毛を逆立てて、素早く木の上に飛び乗る。
その視線の先には、ガリガリで長身の茶髪男、
「ああん? やんのか、おらぁ」
「冬夜、よしなさい」
すかさず、縁が仲裁に入る。
「ちっ。……なぁ、鬼姫。あっしがあいつらを片付けちゃっていいっすか」
冬夜が刃のような鋭い爪を持った両手をカチカチと鳴らす。
暴れたくて仕方ないようだ。さすが、
それは自分も同じだ。実は暴れたくてうずうずしていた。鬼の血が騒ぐ。
「駄目だ。半分だけにしておけ」
鬼特有の血のように赤い眼を冬夜に向け、牽制する。
縁、菜々桜、冬夜は先祖代々、鬼ヶ崎家に使える護衛たちだ。特にこの三人は”三獣士”と呼ばれるほど、腕が立つ。
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