小説家ってモテるの?
モテるわけねーだろ!!!
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小説家はその仕事の大部分をひとりで行う。「小説家に必要な才能」について「孤独に耐えられること」を挙げる人もいて、僕もけっこう賛成したいくらいだ。小説家よりも出逢いが少ない職業というと、衛星軌道上で永遠に生きながら考えるのをやめる仕事(定員1名)くらいではないだろうか。
デビュー前にパートナーがいない場合、作家生活に入ってからでは相当厳しい、というのが業界の定説だ。合コンなりマッチングアプリなりでかなり積極的に動かないと生涯独り身だろう。
もちろんモテる小説家はちゃんといる。
でもそれは、小説家以外の要素でモテている。「金がある」「話が上手い」「気配りができる」小説家だからモテるのであって、そういう形容詞をすべて取っ払って「小説家」だけではべつにモテはしない。小説家じゃなかったらもっとモテていた可能性すらある。
バンドやスポーツじゃあるまいし、まさかモテたいという理由で小説家を目指す人もいないだろうけれど、一応注意しておく。
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ところで、小説家は面白い話を書くのが仕事なのだから、売れてる小説家なら喋らせても当然面白いだろう、と思っている人が世の中には多すぎる。
これがね……なかなかどうして……。
世間一般に比べればやはり面白い話をしてくれる人の比率は高いように思えるのだけれど、そもそも聞いている僕が同業者だからで、把握・共感しやすい話が出てくるというバイアスのせいかもしれないのだ。
売れれば華やかな世界の住人とお近づきになれて、うまくすればお付き合いから結婚まで、なんて夢を見ている人もひょっとするといるかもしれない。が、漫画家だとたまに聞くけど小説家で聞いたことないでしょう? 中山美穂と結婚した辻仁成? あれはミュージシャンだ。別枠計算。
けっきょく知り合う機会があっても自分から積極的に動けるかどうかだ。漫画家って小説家に比べて日頃から他人との関わりが多い。担当編集とのやりとりも小説家の何十倍もするし、アシスタントを雇っていればそこでも対人関係をこなす必要が発生する。コミュニケーション能力は必然的に高くなる。何週間もコンビニ店員以外の人間と喋らないような小説家とはまったく比較にならない。
合コン(というか婚活パーティ?)をやった話は数多く耳にしたが、ゴールインまで行ったのは知っている限りで一人だけ。しかもその一人は「婚活? そんなんべつに無理しなくても、女の子とお近づきになる機会にちょっと本気出せば楽勝よ」みたいな舐め腐った態度で、合コンにも数合わせで呼ばれただけという男だったらしい。往々にしてそういう者が勝つ。あとは死屍累々。
遠い噂に聞いただけだが、独り身の女性作家と男性作家を集めて合コンを開くというものすごいことを企画していたベテラン作家もいたらしい。その人自身は既婚なのでつまりお見合いおばさんみたいなものですね。
作家同士のカップルも、みなさんが想像するほど多くはないが、ちゃんといる。いちばん有名なのが小野不由美・綾辻行人ご夫妻でしょう。学生時代からの知り合いらしいのでカップルが両方とも作家になった、という方が正しいのだろうか。
デビュー後に知り合った作家同士カップルもいくつか実例を知っているが例外なく破局している。僕は男性側の見解しか聞いたことがないが、「やっぱり作家同士って難しいよね」などときまって言う。いやあどうだろうね……うまくいっているところもあるわけだし、単純にあなたが酒癖が悪かったり家事が壊滅的だったり財布をしょっちゅう失くしたりして愛想を尽かされただけでは?
僕のまわりにはかようにだらしない同業者が多いのだが、これを公言すると「類が友を呼んでいるだけでは」という正論を投げつけられてしまうので胸の中にしまっておくことにしている。
もう切ない話にしかならないので今回は短めで終わっておくか……。
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これだけだとみじめなので、最後にみんなが知りたがっていそうなことをFAQ形式で書いておこう。
■ファンと結婚した小説家はいますか?
□います。
■声優と結婚した小説家はいますか?
□います。
■自キャラと脳内結婚した小説家はいますか?
□いっぱいいます。
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