第4話 灯台下暗し、どうして気づかなかったのだろう?

「どうしよう」と悩みながら、自転車に乗ろうとしたある日、ふと気づいた。いや、なぜ今まで気づかなかったのだろう。自分の自転車の横には、今は誰も乗っていない原付バイクが置いてあったからだ。


親父が、伯父から買った中古の原付バイク。親父の話では、3台の不動バイクから使えるパーツを使って、伯父が一台の動くバイクに仕立てたらしい。なるほど、エンジンをかけるためのカギと、ガソリンタンクを開けるカギが違うはずである。おふくろがパートに行く予定だったので、親父が3万円で譲ってもらったのだが、パートの話が流れて、置きっぱなしになっていたバイクだ。


数年間、当たり前のように自分の自転車の横に置いていたので、視界に全く入っていなかったのだ。


「なんだ。俺も大学生になったし、原付バイクに乗っても、誰も文句なんか言わないだろう。どうして気づかなかったのだろう?」とうかつな自分を笑いたくなってしまった。


我が家の家訓として「免許は自分の金で取ること」というものがあった。両親曰く、「自分のお金で免許を取らないと、免許の有難さがわからないでしょ」という事だったが、普通自動車免許を取ろうとすると、30万円近くかかる。実家も貧乏、私も貧乏なので、そんなお金、どこにもなかった。


「ま、原付バイクに乗れれば、それでいいや」と割り切り、原付免許を取ることにした。


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