第2話 いじわるなんだから…。

そして僕は、晴れて大学生になった。親から突き付けられた「自宅から通える国公立大学」という条件を何とかクリアできたわけだ。もちろん、というわけではないが、自宅から大学までは、自宅から高校よりは遠くなってしまった。そんなわけで電車通学を始めたのだが、この鉄道、どう考えても「嫌がらせ」をしているとしか思えないダイヤを組んでいるのではないか、と毎日思っていた。


自宅最寄り駅から普通列車に乗り、乗り換え駅のホームに列車が滑り込むと、向こうに見えるホームから、本当は乗りたいと思っている急行列車が発車していくのが見える。そして帰りは、急行がホームに滑り込むと同時に、向かいのホームに止まっていた普通列車の扉が閉まり、そして出発していくのが見える。


それなりの都市なので、本線上の列車は数分に一度走るわけだが、種別を考えると、どうしても10分間隔、というような形になってしまう。朝も夕も、乗換駅で目的の列車が出発するのを指をくわえて眺めた後、10分間の待ち時間が発生していたわけである。


ただ待つだけならまだしも、「目的の列車が目の前で出発してしまう」というのを毎回見せつけられるのは気持ちのいいものではない。


それに、大学は隣町の隣にあるはずなのだが、鉄道だと遠回りになってしまい、通学時間が90分かかってしまう。往復なら3時間だ。「何かがおかしい」と考えた。


親父の「全国自動車マップ」を借りて自宅から大学への通学路を検討してみた。地図を見る限りでは、電車で大回りするよりも、自転車で直線距離を突っ切ったほうが速いかもしれない。

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