風を切って走る!
川線・山線
第1話 これから始まる些細な冒険
キーハンガーから取ってきたカギを差し込み、「ON」の方にひねってみる。いくつかのインジケーターのランプが点灯した。
「おおぅ!」
思わず声が漏れる。まさか自分がこんなにドキドキするなんて、予想もしていなかった。
「START」のボタンを押すと、セルモーターが回り出し、「バタバタバタ」と小さなエンジンは回り始めた。
「おおぅ!」
と、言葉を失ったかのように、小さな驚きの声を上げるしかない僕。
今日は僕の20歳の誕生日。そして、初めて「運転免許証」を手にした日だ。手に入れた免許はいわゆる「原付免許」である。
高校時代、バイクの免許を取って、バイクに乗っている友人はそれなりにいたが、特に彼らをうらやんだりすることはなかった。別に「バイクに乗りたい」なんてことも思っていなかった。所詮一般高校生の行動範囲は、たかが知れている。仮に鉄道を趣味とするならば、日本全国が行動範囲となるだろうが、そんなわけでもない。
お小遣いも少なく、高校からバイトも制限されている自分のような高校生なら、行動範囲は自宅から高校まで、そしてそこから派生するいくつかの場所に限定されるわけだ。それに、なんといっても移動手段は「自転車」である。自転車、といっても、いわゆる「ママチャリ」を少し若者向けにしたような代物である。1日に100km近く走破するスポーツサイクルではないのだ。そんな遠くに行けるわけでもない。そんな感じで、自宅と、高校と、それらを囲む街の中で高校生だった僕らは日々を過ごしていたわけだ。
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