第5話 儀式
眼が覚めると、木の天井が眼に入った。背中が木に当たっている。私は木の上に寝ていた。頭の芯がズキズキするように痛んだ。身体を動かそうとしたが・・動かなかった。頭を巡らせると、水平に仰向けになって両手を万歳する格好で、木の台のようなものに身体を縛られているのが分かった。素っ裸で・・
えっ? 裸?
一気に意識が戻った。
横で声がした。顔を向けると、私が縛られている木の台の横に同じような台があって、幸次が私と同じ格好で縛られていた。幸次も裸だ。木の台の下には畳が見えた。向こうの掛け軸に鎧武者の絵が掛けてある。ここは、私たちが案内された日本間のようだ。
私は幸次に声を掛けた。
「幸次」
幸次が答えた。
「由香。無事か?」
「ええ。こ、これは何?」
すると、頭上で声がした。
「おや、気が付いたようね」
私の頭の上に、あの紫の着物を着た女将の顔が現れた。ついで、6人の
幸次が叫んだ。
「お前たちは誰だ? どうしてこんなことをするんだ?」
女将が笑った。金属的な引きつった笑いだった。
「おほほほほ。私たちはある神様をお守りしている信者だよ。世間には内緒の神様なんでね。その神様のことは教えるわけにはいかない。でも、これだけは教えてやろう。私たちの神様にはね、ときおり
「僕たちをどうする気だ?」
「それはこれからのお楽しみだよ。さあ、みんな、儀式を始めるわよ」
女将の声で仲居たちが部屋の中に散った。私の視界にあるのは女将の顔だけになった。
「お前たちを縛っている、この木の台にはちょっとした仕掛けがあってね。台の横に8個の装置があって、1から8までの番号が振ってある。けどね、その番号は自動的に変わるので、どの装置が今何番なのかは誰にも分からない。それでね、その装置にこれを取り付けるんだよ」
女将が畳の上から何かを取り出した。大きな鎌だった。蛍光灯に湾曲した鎌の刃がキラリと光った。女将が舌を出して鎌の刃を舐めた。
私の背筋に冷たいものが走った。
「これから、7本の鎌を台の横に取り付けるんだ。それから、お前たちに1から8までの好きな番号を順に言わせてやるよ。お前たちの言った番号を、こちらで操作すると・・その番号の装置が回転して、鎌がお前たちの身体に向かって落ちてくる。でも安心しな。お前たちの身体に刺さる長さがあるのは、7本のうちの1本だけだ。そして、7回番号を言って1回でも鎌が身体に刺さったら、お前たちを殺すよ。逆に、1回も鎌が身体に刺さらなかったら逃がしてやろう。しかし今までに、鎌が刺さらずに、ここから逃げた人間は一人もいないよ」
私は恐怖で縮み上がった。
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