第20話 蕎麦屋

東京駅から何の路線かわからずに乗った電車で立ったまま寝過ごしてしまったリナは「高尾駅」という所まで来ていた。

改札の近くにいた駅員さんに事情を話すと、リナは中央線特別快速の高尾行に乗っていたらしくすっかり終点の高尾まで寝てしまったというわけだ。

せっかく来たので高尾を散策してみようと思ったリナは改札を通過すると駅周辺の雰囲気が東京って感じがしないと思った。


「案外、都心から遠くなると田舎なんだなー」


リナはとりあえず周辺を散策してみようと歩き始めた瞬間にお腹の虫が鳴った。

そういえばまだお昼ごはんを食べていなかったので、リナは周辺に飲食店がないか見渡すと蕎麦屋があったので入ることにした。

店内は何十年前の昭和の雰囲気を残した古い蕎麦屋で客は昔からの常連らしき人と高尾山にハイキングに来たらしき人達がいた。

店員にテーブル席に案内されてメニューに目を通したリナは、とろろ蕎麦を注文した。


リナはスマホのマップアプリを開くと現在地を確認しながら思った。

そもそも自分は地図も見れないしこれだけ路線の多い東京の路線図なんて迷路にしか思えなかった。

しばらくするととろろ蕎麦が運ばれてきた。

山芋をすりおろしたとろろと蕎麦の相性は抜群で粘り気がありながらさっぱりとした味わいのとろろ蕎麦はヘルシーで美味しい。

かなり空腹だったこともありリナはあっさりと完食して満足な様子。

長居してもこれから来店してくるお客さんの迷惑になるので会計を済ませて外に出ると向かいにある自販機で買ったコーラを飲んでいる細身で後ろ姿が20歳くらいの平均身長くらいの女性がいた。

髪型は肩より少し長いくらいで軽くウェーブがかったアッシュベージュ系のヘアカラーで今風なのだが、着ている服装が現場の仕事をしているようなツナギ姿でギャップを感じる。

ただ、なんとなくだが知り合いに雰囲気が似てると思ってリナは女性に近づいてみると、女性は気配を感じたのか後ろを振り返ると「あっ!」と知り合いに偶然会ったような声を出して手を振ってきた。


「おぉー!リナちゃんじゃーん!こんな所で何してんのー?」


随分と雰囲気が変わったから気づかなかったが、女性の正体はリナが部活を現役でやっていた時のバイクのメカニックを担当してくれた都内で自転車を営む斉藤舞華だった。

ヴァイオレット系の長い髪を三つ編みにして片側で下ろしてた髪型から一変していたのでリナは全く気づかなかった。


「ま、舞華さん!?…随分と雰囲気変わりましたね!」


「でしょー!今風の若い子みたいにしたんだ、似合う?」


「はい!可愛いです!」


「ありがとぉー、で?リナちゃんこんな所で何してるの?(笑)」


「……えーっと…(笑)」


リナはここまでの経緯を恥ずかしそうに話し始めた。



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