第19話 ……どこですか?

人波の流れに乗って東京駅のエスカレーターを上がると、まもなく発車する電車に乗り込もうと周囲の人達の足取りが早くリナは半ばもみくちゃになりながら電車に乗り込んだ。

路線もわからずにとりあえず乗ったがリナはなんとか空いていたつり革を持つと走り出した電車の揺れを周りの人にぶつからないように踏ん張った。

近くで大きめの声で楽しげに会話している若者のせいで電車のアナウンスを聞き逃したので路線名は分からないが次は神田に停まるらしい。

リナは山手線が神田に停まると覚えていたので山手線に乗れたのだろうと勝手に思い込みそうになったところで「あっ…」と何かを思い出した。

そういえば2年前に山手線に乗ったつもりが全然違う路線に乗ったことを思い出したが、朝も早かったこともあり急に眠気に襲われたのでつり革を持って立った姿勢のままウトウトとリナは眠ってしまった。

立ち姿勢で寝てしまうのもある意味才能なのだろうか…


リナは夢の中で「お姉ちゃん!起きて!」と妹のリサの声が聞こえた感じがしてうっすらと目を開けると隣に駅員さんが心配そうに声をかけてくれたのが夢の中だったのでリサの声に聞こえてただけだった。


「お姉さん、もう終点ですよー」


「……えっ!?…あっ、すみません!立ったまま寝ちゃってたみたいで(笑)」


「お財布とか貴重品盗られたりしてないですか?」


駅員さんのこの言葉に慌ててリナは持ち物を確認するとスマホも財布も盗られていなくて安心した。

今はキャッシュレス決済オンリーのお店も増えたし、コンビニなんかは完全キャッシュレスオンリーの店舗ばかりだ。


「大丈夫です!スマホも財布もあります!」


「それならばよかったです。では、お気をつけて」


リナに軽く敬礼した駅員さんは、ホームの巡回を再会するため電車内から降りていった。

そしてリナは肝心なことを聞くのを忘れていた。


「……そういえば、ここって何駅だろ?」


なんだか東京とは思えない田舎の駅に来てしまった感じがして不安になりそうだったが、意外にも人がいて秘境に来てしまったという感じではない。

改札の方に向かって歩いていくと駅名の表札を見てリナは驚いた。


「ええっ!?た、高尾!?………って何県?(笑)」


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