第16話 タンデム
猛暑厳しい2038年の夏の気温は40度超えなど当たり前の8月真っ只中。
初めて普通二輪免許を取得する際にお世話になった教習指導員の如月彩葉がいる茨城県まで久々に向かうことになったリナは、家の玄関の前でヘルメットと大きめのリュックを背負ってとある人物を待っていた。
リナは少しイラついた様子でスマホの時計を確認すると「おっそいなー!」と誰もいない家の前で怒鳴っている。
強いて言えば近くにいた野良猫がリナの声で驚いていたが…
リナが怒鳴った30秒後くらいに遠くから甲高い音を響かせたバイクが近づいてきた。
EVやハイブリッド車が主流の現代では珍しい1980〜90年代を思い出させるような2ストロークエンジンの甲高い音だ。
少しするとバイクとライダーが現れた。
スラッとしたスタイルが良い女性がフルフェイスを被っているがリナには誰だかわかっていた。
バイクがリナの前で停車するとエンジンを切ってスタンドを立てるとヘルメットのシールドを上げて「ゴメン、遅くなった!」と両手を合わせて謝った。
バイクの車種は昔のKawasakiの名車350SSだ。
「フラン、遅いよ!何してたの!?」
「いやー、なかなかバイクのエンジンかからなくてさ(笑)まぁ昔のバイクだから…」
「こんな暑い日に外で待ってたから溶けそうだったよ!まぁ新幹線の時間は余裕あるからいいけど、三島駅着いたら飲み物奢ってね(笑)」
「え!?……まぁ、いいけどさ(笑)、とりあえずリナ後ろに乗りなよ」
幼馴染の中野フランは少しだけタンク寄りにズレるとリナが後ろに乗りやすいようにできるだけシートのスペースを確保する。
リナはヘルメットを被るとフランの後ろに乗った。
ズシッと沈み込むリアタイヤが少し潰れているのを見たフランはリナが見た目のわりに体重があることを忘れていた。
幼少期から空手や筋トレなどで祖父に鍛え上げられたリナは女子高生とは思えない筋肉量なので167cmで体重が60キロと170cmの男子の平均体重並もある。
インカムを繋いだフランはリナに言った。
「そういやアンタって見た目細いけど筋肉バキバキすぎて体重重いんだよね、アンタを後ろに乗せてアタシ走れるかな(笑)」
「えー(笑)大丈夫でしょ?、無理そうだったら言ってくれれば私が運転するから」
とりあえずフランの運転で三島駅に向かうことになったので、フランはギアを1速に入れるとゆっくりと走り出した。
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