第15話 師匠
昨日、大井川と浜松へ出掛けていたリナが帰宅したのは23時で久々に結のバイクに乗ったら疲れたのか帰宅してそのまま寝てしまった。
結局次の日は9時頃起きてシャワーを浴びると、髪の毛をタオルドライして冷蔵庫からコーヒー牛乳を取るとコップに注いで一気に飲み干した。
一段落したリナはスマホを手に取るとある人物に電話をかけた。
『…もしもし、久しぶりね?リナちゃん』
今でこそ緩和されたがリナが高1の16歳の時は、普通二輪免許のMT免許が教習所で取得できなくなってしまっていたので免許センターで一発試験のみしか取得手段がなかった。
東雲先生の知り合いに教習指導員をしている人の協力を得てバイクの練習をすることになったが、その時にお世話になったのが電話の相手の「如月彩葉」だ。
彼女は学生の頃には既に両親は他界しており、たった一人の歳の離れた兄と2人暮らしだったが兄が山梨へ転勤になった際に1人で高校時代を送らなければなくなったことを機に自動二輪免許を取得することを決めたそうだ。
彩葉が高校生の頃は小型、普通、大型の3つの区分で16歳で普通二輪免許を取得すると400cc以下のバイクまで乗れた時代。
バイクのセンスがあった彩葉は普通二輪及び18歳で大型二輪免許を共に一発試験で取得して、大人になった現在では教習指導員として指導者の立場として活躍している。
立場上安全に運転をすることを第一に考えてバイクに乗っているが、サーキットを走らせたら相当なテクニックの持ち主で東雲先生曰く「私や舞華さんもその日のコンディション次第では負ける」と言わせるほどで、伝説と呼ばれた東雲先生と舞華にも引けを取らないそうだ。
リナは現状の自分自身について師匠の彩葉に話した。
そして続けてリナは彩葉に言った。
「如月先生のZ400FXで走りたいんです。先生のお父さんの大事な形見で長年かけて修理したことは知ってます。それでも…」
リナが彩葉にお願いすると、少し間が空いたあとに彩葉が言った。
『どうして私のFXで走りたいと思ったの?音に拘ってマフラーは変わってるけど他はノーマルよ?本格的にレース活動してる人と走りで勝負するのに私のFXでいいの?』
「逆にノーマルだからいいんですよ。私はKawasaki好きですし、最終的にはZ2に乗りたいと思っているのでKawasaki乗りの如月先生に相談したんです」
『……わかったわ。あれから2年、随分と上手くなったと萌歌ちゃんから定期的に聞いていたから、今度は私もあなたの走りを見たいわ』
こうしてリナは、師匠のFXを借りて走れることになった。
かつて彩葉が一人暮らしの移動手段として乗るようになった亡き父の形見であるZ400FX。
事故で大破させて修復不能となったFXをなるべく父が乗っていた面影を残すために使えるパーツだけを使って、再利用できなそうなパーツは高校時代にバイトをしてたバイク屋のツテでパーツを取り寄せてもらいコツコツ時間をかけて直したZ400FXがまさか弟子であるリナが乗ることになるとは彩葉も想像しなかっただろう。
「FXは私が茨城まで出向いて借りに行きます」
リナがそう言うと『えぇ、待ってるわ。それじゃ…』と彩葉は言いながら電話を切った。
リナは「よし」と言いながら立ち上がると茨城まで遠征する為の準備に取りかかった。
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