第13話 パワーバンド

浜松ICから東名高速に乗ったリナと東雲先生は、料金所手前で少し手間取ってしまう。

理由は結のRZがETC非搭載だったので一般レーンから通行券を取る羽目になったからだ。

4輪の車だと窓を開けて通行券を取ればいいだけだが、2輪のバイクの場合は通行券を収納する手間があるので時間ロスしてしまう。

おまけに後続車がいた場合は無言の圧力をかけられているみたいでなんだか申し訳ない気持ちになってくる…


通行券を取ってジャケットの胸ポケットに券を入れたリナは、すかさずギアを1速に入れて本線へと向かっていく。

ハザードを点灯させて待機していた東雲先生もリナが走り出したのを確認すると、リナを先行させて後ろについていく。

リナに久々に思いっきりバイクを堪能してもらう為だろう。

本線合流の加速ポイントでリナはスロットルを開けて回転を上げていく。

タコメーターが6000回転を超えたあたりでRZがパワーバンドに入り排気音がさらに甲高いレーシーな雄叫びに変化して凄まじいパワーで本線に合流してさらに速度を上げていく。

リナは「うわああ!!何これぇぇ!!」と叫びながら浮き上がろうとするフロント抑え込みながらシフトアップする。

東雲先生の車を引き離してしまったことに気づいたリナは速度を落とすと、助手席に乗っている結に言った。


「窪塚さん、西園寺さんはインカムをスマホでBluetooth接続してるから電話をかけてくれない?そして私達に気にせず好きに走りなさいと伝えて」


「りょーかいです!」


結はスマホで電話をかけるとリナは着信に気づいてインカムの着信応答ボタンを押して電話に出ると先程東雲先生から聞いた伝言だけ伝えて電話を切った。


リナはギアを4速から3速にシフトダウンすると、スロットルを開けて加速していく。

他のことは何も考えずに運転にだけ集中するこの感覚がバイクに乗っていて1番好きな瞬間。

RZのフィールに慣れてきたリナは速度を少し上げて前方の車を追い越していく。

それにしても250ccとは思えないこの加速感…

自分が乗っていたバリオスや東雲先生に借りて乗っていたイナズマ400よりパワーバンドに入った瞬間は凄まじいと感じた。

これに乗っていたら2ストの虜になりそうだとリナはニヤニヤが止まらない。

順調に東名高速を走るリナは清水JCTで新東名高速へと乗り換えて法定速度120キロの区間で存分にRZのパワーと爽快感を楽しんだ。


RZの走りを堪能したリナは少し休憩したくなったのとそろそろ東雲先生達と合流した方がいいと思い、駿河湾沼津サービスエリアに寄ることにした。



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