第12話 忘れていた感覚

リナと結はRZが停めてある浜松駅の自動二輪車専用駐車場に来るとRZのキーを結がリナに手渡す。

「キックできますよね?」と少々小馬鹿にした感じで聞く結に対して軽くみぞおちをグーパンしたリナは「馬鹿にしないで(笑)」と笑いながら返した。

RZにキーを挿すと燃料コックを動かしてガソリンが流れていくのを確認する。

流石に舞華がメンテしているだけあってエンジン周りもフレームも本当に数十年前のバイクか?と言うくらい極上だ。

キックレバーを手で出したリナは体重を乗せて右足でレバーを蹴り下ろすとエンジンは一発で始動した。


「おぉ!流石です先輩!」


「久々にバイクの音を、しかも2ストだから高揚感がやばいね(笑)」


リナはスロットルを小刻みに空吹かしした。

そう、これだ…この感覚…

エンジンの振動が身体に伝わってきて今にも早く走り出したくなった、しばらくバイクに乗らないでいたからすっかり忘れていた。

生活環境が変わったりしてしばらくバイクから離れていた人が久々にバイクに火を入れて乗ると感じる、乗ったことがある者にしかわからないなんとも言えない感覚を経験したことがある人は多いはずだ。


東雲先生が車をコチラに乗ってきたので結は先生の車の助手席に乗った。

暖機は十分に行ったので、いつでもリナは出発できる状態だ。

リナはヘルメットと結から借りたジャケットを着るとRZに跨った。

170cm近くあるリナだと足つきの方は全く問題ない、リナはクラッチレバーを握るとシフトレバーを1速に入れて東雲先生の方を振り向いて右手の人差し指と親指で丸のジェスチャーをして準備OKと伝えると浜松ICの方面に向かって走り出した。

すっかり夜になってしまったが、夏の気温ならばむしろバイクに乗っていて気持ちいいと感じる。

結が貸してくれたジャケットは、夏用のメッシュジャケットなのでむしろ夜の高速だと走る場所によっては少し肌寒いと感じる人もいるだろう。


浜松駅から離れて大通りに出るとリナは少しRZのエンジン回転を上げて加速してみた。

パワーバンドに入っていないのでそこまでパワーは感じないが、それなりにトルクもあって乗りやすい感じだ。

久々にバイクに乗ったが身体で覚えた動作というのは忘れないもので乗ってしまえば頭で考えなくても身体が勝手に動いてくれた。


やはりバイクは楽しい…

そう思ってるうちに浜松ICの高速の入口が見えてきた。

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