第9話 再び

蘭と奈々未の1135Rをかけて2人だけのバトルをすることになったリナは、帰りの東名高速を走る東雲先生が運転する車の助手席からボーッと外を眺めていた。

そして急に「あっ!」と声を出すので東雲先生はびっくりしながら「突然何!?」とリナに言うと焦った顔でリナが話し始めた。


「冷静になって考えてみたら、私バイクがないじゃないですか…」


あぁ…と頭を両手で抑えて俯くリナに東雲先生はため息をつくとこう言った。


「1135Rに乗ればいいんじゃないの?私が昔、榊原とバトルした時は亡くなった奈々未先生に代わって私が1135Rで榊原と走ったわ」


「…先生の時は、榊原って人の卑劣なやり口に対して引導を渡した感じじゃないですか?…でも、私と蘭さんは純粋に1135Rに憧れてる者同士の対決です。私がアレに乗って蘭さんと走るのはなんか違う気がするんですよね」


幸助のバイク屋で蘭と別れる際に蘭は「大型二輪免許は取ったの?」とリナに聞いてきて、リナは「まだ中型までです」と答えると蘭は高校の時に乗っていたGSX400S・カタナ400で走ると言ってきた。

既に蘭は大型二輪免許を取得して、今はGSX1100Sに乗っているが中型までしか免許がないリナに合わせてそう言ってくれたのだろう。

東雲先生は「仕方ないわね…」と言うとポケットからある物を取り出してリナに差し出した。


「先生…これって?」


「わかるでしょ、私のイナズマのキーよ」


高校2年の時にバリオスをエンジンブローさせて以来、東雲先生の愛車のイナズマ400を借りて高校3年の最後の高校生レースを終えるまでイナズマで腕を磨きつつ走り込んだ。

引退と同時に完全に東雲先生に返却する形となったが、まさかこういう形で再び乗ることになるとは思わなかっただろう。

リナはイナズマのキーを握り締めながら東雲先生に礼を言った。


「…ありがとうございます、先生」


「負けるんじゃないわよ!私は貴女に奈々未先生の1135Rを受け継いでもらいたいんだから!向こうはプロと言っても去年まで貴女と同じ高校生だった子よ。西園寺さんなら勝てるわ、私の教え子なんだから」


「…はい!」


こうして蘭と走る為のバイク問題は解決したタイミングでリナのスマホが鳴った。

確認すると電話の相手は結からだった。


『もしもし!リナ先輩?今どちらにいます?』


「え?今は沼津に向かって東雲先生の車で東名を走ってるところだけど?」


『これから浜松餃子食べようと思うんですけどリナ先輩と先生も一緒にどうですか?』


急すぎるお誘いに戸惑ったが、リナ達は成り行きで浜松に向かうことになった。


結はたまに変なタイミングで電話をしてくる…






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