第3話 故郷

東雲先生から電話があった3日後に、東雲先生の車の助手席に横乗りして2人は先生の故郷でもある島田市の大井川地区まで向かっていた。

東雲先生自身も故郷に帰るのは1年以上ぶりなんだとか?

ここ最近は机と向き合ってひたすら勉強か、休憩時間に筋トレくらいしかやっていなかったリナにとってはいい息抜きのドライブだろう。

東名高速道路を法定速度でまったり走る車内から夏の快晴の太陽で照らされる駿河湾の海を眺めているリナに東雲先生が声をかける。


「西園寺さん?トイレとか大丈夫?」


「えぇ、大丈夫です」


「OK!とりあえず日本平PAまでノンストップで行くわよ」


東雲先生はそう言うと車のクーラーの温度を24度から23度に下げた。

意外とこの人は暑がりなことをリナは思い出した。

しばらく沈黙が続いた後に、リナが口を開いて聞きたかったことを聞いた。


「どうして今になって奈々未さんの1135Rのことを話してくれる気になったんですか?」


東雲先生は少し間を空けたあとに答える。


「奈々未先生と幼少期に出会ってた少女ということは、西園寺さんが高1の時に免許取得に励んでいた時には気づいてたわ…まぁ、先に気づいたのは舞華さんだったけれど。…正直に言えば既に奈々未先生が亡くなっていたから話すタイミングがなかったというのもあるけど、今まで1135Rが不動車になっていたというのが1番の理由かしら?」


「じゃあ、なんで今になって私を1135Rのある所に連れて行こうと思ったんです?」


東雲先生はリナの頭を軽くポンポン叩きながら「運命を感じたからよ」と笑いながら言った。

今までどんなに整備を繰り返しても一切エンジンに火が入らなかったのにリナが18歳になった途端に今までが嘘のようにエンジンが始動した。

東雲先生はこの時に思ったそうだ、1135Rがいや奈々未がリナのことを待っていたんだと。

そんなオカルトあり得ない、偶然だ!と言う人もいると思うが東雲先生はそう思いたかった。


日本平PAが近づいてきた頃、突然後続からかなりチューニングされてそうな甲高いレーシーな音を放つバイクが迫ってきたことにリナと東雲先生は気づいた。


「…2スト?最近では余程のバイク好きじゃないと乗っていないわね。でも、この音どこかで…」


東雲先生が横に並んできたバイクの方に顔を向けると小柄なライダーがこちらに向かって手を振っていた。

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