第4話「都市ヴィーザル〈前編〉」
三日後、僕達は都市ヴィーザルに到着した。
都市ヴィーザルは世界でも有数の魔法都市らしく人口は3万人を超える結構大きな町らしい。
東京の市街地から三日間南下してきたということは地理的にここは奈良盆地あたりなんだろう。
都市は十メートルほどの高さの分厚い
人が住めそうな立派な建物は数えるほどしか立っておらず、都市近郊というにはあまりに殺風景で人通りも少ない。
「ついたぞ、都市ヴィーザル。多分リリンさんはここで降りるんだよな?」
リリンさんは、三日前ファントムから助けた女の人のことだ。
道中、僕達に料理を作ってくれたり話を聞かせてくれたりと、色々優しくして
もらった。
「そうです、皆さん色々とありがとうございました、ではお元気で。またどこかで会いましょう。」
そう言って、リリンさんは馬車から降りた。
「いいえ私たちの方こそ色々とお世話になりました。ありがとうございます。」
「ああ、お前も元気でな。」
「じゃあね〜またどっかであったらトランプの続きしようねー!!」
リリンさんに別れの言葉を告げる三人。
「ライラさん、尻尾モフモフで気持ちかったです、ありがとうございました!」
はえ?
「じゃあさようなら〜〜」
リリンさんは最後、僕にそれだけ言うと、駆け足で街の中に消えていった。
「さ、触られてた!?いつ!?」
ここに来るまでの道中、リリンさんやレイラさんが執拗に尻尾を触ってきたから、尻尾を触られるとなんだか変な感じがするからやめてほしいと言ったのだが…
「ライラが眠ってるときに触ってたな。」
「うん、枕にしてた。」
「ライラさんを起こして知らせようとも思ったのですが、なんとも気持ちよさそうに寝ていたもので起こしづらく…」
寝てる間にそんなことが…
でも待てよ?みんな寝る時間は同じだったはずなのに、なんでこの人らリリンさんが僕の尻尾触ってること知ってるんだ?
見張りをしてた
「もしかして、三人は触ってないよね?」
僕が問い詰めた瞬間、あからさまに動揺し出す三人。
こりゃ何かやったな?
「わ、私は断じて尻尾など触ってません!!この二人が…」
やっぱりか…
「あ!?仲間を売りやがったな!!」
「で、でもジュンだってちょっと耳触ってたじゃん!!」
「なっ、何を!?私はただ…」
はあ…難度の触らないでって言ったんだけど。
まあいいか…
「それはもういいから、町の外についたけど、今から何するの?」
僕の尻尾やら耳やらを触った件については一旦今は流すことにして、今から具体的に何をしたらいいのかを聞くことにした。
「あ、ああそうだったな。今からライラの通行書を作成する為に、あそこにある受付所で少し手続きをすることになる。まあ簡単な書類を書いて顔写真と指紋とるだけだからそこまで時間はかからないはずだ。」
指紋なんてないよ?肉球だし。なんて一瞬思ったのは置いておいて早速受付に向かうことにした。
受付所の中に入ると、中世ヨーロッパチックなレトロな感じのするいい感じの内装だった。
受付には女性が三人ほどいてそれぞれ背中に剣やら斧やら物騒なものを背負った男性や女性の対応をしているようだった。
順番を待つため順番待ちの木札をもらって、同行してくれたレイラとリュウさんと順番待ちの椅子に座る…
ここまで全く、何一つ変なことはしていない。
だがどうしても僕に視線が集まる。
やばい、めっちゃ見られてる!?
そりゃあそうだ、受付所の中にいきなり半分獣みたいな人が入ってきたら僕でも気になってそっちを見てしまうだろう。
見た目どうにかできないかな…
こんなにチラチラ見られてるんじゃ街もまともに歩けない。
魔法なんて便利なものがあるんだし、どうにかできないことも無いんじゃないか?
特にさっきから、右斜め後ろの女性二人組はさっきからヒソヒソ話をしているのだけど、それがめちゃめちゃ聞こえてる…
この体になってから音がすごく聞こえやすくなったような気がする。
まあ、前の自分の耳がどれだけ聞こえてたかなんて覚えてないんだけど。
せめて、もう少し離れて話た方がいいのでは…
「あれって、ジャイロさんと同じ獣人さんよね…」
ヒソヒソ話の中で“ジャイロ“という人が僕と同じ獣のような姿をしている獣人だという事がわかった。
自分と同じ境遇の人がいることを知った僕は、リュウさんにジャイロという人について知らないか尋ねてみることにした。
「あの、リュウさん。ジャイロさんっていう人について知りませんか?」
「ああ、ジャイロ先輩?それなら、探索家ギルドで遺物の研究やってる俺の上司だよ。あの人もお前みたいな獣人だけど、会いたいのか?」
まさか上司だったとは…
ジャイロさんにはぜひ会ってみたいのだが、探索かギルドっていう所で遺物の研究をしているらしいし、忙しいのではないんだろうか…
「会ってはみたいんですけど、そんな急に話したいって言っても大丈夫なんですか?予定とか…」
「大丈夫大丈夫、研究って言っても最近依頼が減って暇してるって言ってたし。」
リュウさんは結構適当な事があるので信頼度はやや低めで、本当に会えるのかどうか怪しいところはあるけど、話を聞く限りいつでもOKだそうだ。
これが終わって、時間ができたら会いに行きたいと思う。
「Bの58番でお待ちの方」
そんな話をしていると受付の人に呼ばれた。
受付に行き、名前や身体的特徴、出身国などの事項を記入する書類を書いて、顔写真を撮った。
途中、手形を取ることになったが、身分層に手形?とも思ったので受付の人になぜ手形が必要なのか聞いてみると、どうやら今は魔法が使えるのが一般的な世の中なため、顔写真だけでは本人なのかどうか見極める事が難しいらしい、なので比較的魔法では再現のしづらい指紋や手形を使って本人なのかどうかの証明をしているらしい。
手続きが一通り終わり少し待つと、隣の受付で僕の身分証を手渡され、晴れて街の中に入る事ができるようになった。
この町には大きな罪を犯した住人を追放する制度があるらしく、身分証なしでこの町に入ることはできないそうだ。
身分証を発行してもらっている間に外で待たせていた二人ところに戻ると、馬車がなくなっていた、どうやら馬車は借り物だったらしく馬屋に行って返してきたらしい。
これでやっと街の中に入る準備ができたので、いざ町の中へ!!
門番の方にさっき作ったばかりの身分証を確認してもらい門をくぐるとそこには、高い煉瓦の壁で隠されていた、立派な西洋風の町が広がっていた。
壁の中は、内部に近づけば近づくほど低くなるクレーターのような地形をしており、町の淵にいちするここが一番高くなっていて、町を一望する事ができる。
まちの中心の一番深い場所に池があり、その更に中心には大きな城が立っていた。
「すごい…」
その一言意外の言葉が見つからないほど、この光景は驚くべきものだった。
なぜ文明崩壊ごとはいえ日本に明らかに西洋風の家や城が立っているのかはも気になるのだが、それよりも一番気になるのは人類のほとんどがいなくなった後に残った人間がたかだが300年程度でこれだけ人類が文明を取り戻していることだ。
これもやっぱり魔法による恩恵が大きいのだろう。
「だろ?俺も最初にここに来た時には驚かされたよ。この町はたった一人の魔導師によって200年かけて作られてきたんだ。」
この都市がたった一人の手で!?
「流石に何がなんでも一人でこの規模は…」
「嘘じゃないさ、その爺さんはつい最近まであの大聖堂を作ってたんだ。あのでっかいやつな。でも前、文明反対派の奴らに殺されちまった。今じゃあんなでかい建築できるやつはいないし、あの爺さんがどんな聖堂を完成させたかったなんて分からないから、あの聖堂は今でも放置されているんだ。」
確かに家々に囲まれたところに建築途中の大きな建物が見える。
多分あれが大聖堂なのだろう。
でも、そうだとしたらその魔導師長生きすぎないか?
「でも200年以上人が生きられるわけなくない?」
「何でか知らないけど、その爺さん文明崩壊前から生きてたらしくて。何でそんなに長生きなのか聞いても、それは言えないの一点張りだったんだ。多分何かの魔法だと思うけど。」
そんなものなのか。
まあ要は「魔法の力ってすげ〜」ってことだ。
「そんなことは置いておいて、そろそろギルマスに会いに行かないとまた遅いって叱られるよ?」
「まあそうだな、じゃあ行こうか。」
ていうか、今更だけど何でこの町に来たんだ?
「ギルマスに会いに行くっていても、会って何するの?」
「まあそれはその時説明するからとりあえずついてきてくれ。」
そのことは後で説明するらしい。
まあ今更なに考え込んでいても仕方ないのでギルドに行ってそれから詳しくいろんなことを聞けばいい。
世界終焉のその果てに アゴラット @agorat
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