第3話「300年」

 あれから四人にいろいろな話を聞いた。

 

 どうして東京がこんなことになっているのか、何故僕の体がこんなことになっているのか。

 

 300年前、魔力という未知のエネルギーを手にした人類は研究の過程で魔法の力を全人類に広め、一部の者が魔法という強大な力を手にすることとなった。

 魔法には人それぞれ特徴があり、自在に操る物であったり、美味しい料理を作れるといった物まである。

 だがそんな力の使える人間を人は同じ人として見ず、家畜のように利用し必要無くなると、まるでゴミのように捨てた。

 そんな時、一人の幼い子供に死を司る神の如き魔法が与えられてしまった。

 その魔法は手を触れただけで魂を奪え、さらには死んだ者の名前を呼ぶだけで死者の魂を常世とこよに呼ぶことができた。

 そんな夢のような力を我が物にしようと、数多の人間がその子供を捕らえようとした。

 だが誰にもできなかった、そればかりかその子供は自分の気に入らない人間をこの世から消してしまったのだ。

 魔法の扱える人間を除いて…

 それから人間の管理がほぼ行き渡らなくなった都市はわずか数日で機能しなくなり、地球上のあらゆる人間の文明がほぼ消え失せた。

 この状況に人類の文明が受け継がれず世界から消え去ってしまったことを危惧した学者は、優秀な知識や魔法を持った人間を冷凍ポッドに入れ数百年後に目覚め人類に文明を継承されるようにした。

 だが冷凍ポッドの殆どは、文明崩壊後の世界に突如として影から現れた謎の存在、『ファントム』によって破壊され、今では日光に当たる場所に放置された不安定な冷凍ポッドしか残っていない。

 日光にさらされている場所の冷凍ポッドは不安定で少しの外的要因で歪みが生じてしまう。

 その結果、冷凍ポットに入っている人物は魔力に晒されることになり、身体の性質が変化してしまう。

 その変化のほとんどが、目の色や髪の色が変化したり小さなアザができる程度だがごく稀に、骨だけになったり、全身に変化が起きて“獣化“してしまうことがあるらしい。

 そんな冷凍ポッドに入って、この時代で目覚めた者たちのことを人々は“タイムリープしてきた人“というを込めて“リーパー“と読んでいる。

 リーパーたちは、原因は不明だが何故か総じて自分の生い立ちや役職、身分や家族、友人、恋人などの“自分自身のこと“や魔法に関する知識だけが欠落している事がほとんどらしい。

 そんなリーパーたちは皆なんらかの重大な知識や魔法を持っているため、今では人類が血眼になってリーパーの入ったポッドを探しているらしい。

 

「で、今回保護されたのが僕だったんだ。」


 何が起こっているのかやっと理解した。

 ようは、人類が滅んで文明もほとんど消えてしまったから僕のようなリーパーが人類復興の手助けをしてる、体が変わってしまったのは冷凍ポッドに入ってたせい、ってことか。


 「まあそういうこと、わかった?ライラちゃん…くん?」


 そういえば僕、女だっけ?男だっけ?

 ふと思い出したように股に手を伸ばす。


 あ〜そう言う感じね…


「とりあえず、呼び捨てか、嫌ならさん付けでお願い…」


 まあ、うん… そういうことだ。

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