令和おとぎ話 「3匹の子ブタ」

3匹の子ぶた

 ある日、3匹の子ぶたのお父さんが急なアレで死んでしまいました。


 お父さんが補助金ジャブジャブの太陽光発電の事業でボロ儲けした莫大な遺産を、お母さんと3匹の合計4匹で分けて相続することになりました。


 民法の法定相続割合に基づき、まずお母さんが半分を、残り半分を子供3匹で仲良く均等に分けます。


 しかし3匹で分けてもものすごい金額になる遺産だったので、3匹はいきなり億万長者になりました。


「悪い奴がお前たちの財産を狙ってくるから、用心するんだよ」


 お母さんは3匹にそう言って聞かせます。


 しかし長男の子ブタは、あろうことか防犯意識がゼロでした。

 豪邸を買ったものの、ろくに防犯対策をしていません。


 買ったばかりの超高級外車フェラーリ・ラフェラーリFXX Kも外から丸見えです。

 さらには助手席にシャネルのバッグを放置していました。


 もし防犯に詳しい専門家が見たら、防犯意識が欠如していることをアピールでもしているのかと、思わず天を仰いでしまうほどです。


 そこへ案の定、盗人のオオカミがやって来ました。

 今のご時世、金持ちリストはダークウェブや名簿業者から簡単に手に入ってしまいます。


 恐ろしい時代になりましたね。

 皆さんも気を付けてください。


「しめしめ。長男の子ブタめ、全く防犯意識がないぞ」


 盗人オオカミは悠々と長男子ブタの家に侵入すると、宝石から金の延べ棒から通帳からタンス預金まで、何から何まで金目の物を根こそぎ持っていってしまいました。


「ぎゃははは! こいつバカだろ、暗証番号を誕生日にしてやがるぜ!」


 しかもなんと言うことでしょう!

 通帳の暗証番号が誕生日だったため、いとも簡単に預金が全額引き出されてしまったのです!


 引き出し上限すら設定していなかった長男子ブタは、哀れ無一文になってしまいました。


 ◇


 これに味を占めた盗人オオカミは、次に真ん中子ブタを狙うことにします。


「ほぅ、オートロックの高級マンションか。長男の子ブタと違って、こいつは少しは防犯意識があるようだな。だが俺様にかかればちょちょいのちょいだ」


 盗人オオカミは宅配業者を装ってオートロックを突破してマンションに侵入すると、真ん中子ブタの部屋から金目の物を根こそぎ持っていってしまいました。


「ぎゃはは、こいつは暗証番号がゾロ目かよ!」


 真ん中子ブタは通帳の暗証番号がゾロ目だったために、これまたいとも簡単に預金を全額引き出されてしまい、長男子ブタに続いて無一文になってしまいました。


「ふぅ、またもや楽なシゴトだったぜ。さて、闇名簿によると、こいつらにはもう1人弟がいるらしい。そいつもどうせ防犯意識が皆無だろうから、このオレ様が美味しくペロリと頂かせてもらうぜ」



 盗人オオカミは意気揚々と末っ子子ブタの家へと向かいました。


「さてと、この家にはどれくらいの大金があるのかな?」


 盗人オオカミはまたもや宅配業者を装ってオートロックを突破したものの、しかし気が大きくなっていたため、玄関にセコムのシールが貼ってあることを見落としてしまいます。


 そう!

 末っ子子ブタはオートロックだけでなく、さらにセコムと契約していたのです!


 しかもただのセコムではありません。

 すぐ近くにセコムの拠点があるため、5分以内に駆けつけてくれる特別立地なのでした!


 さらにこの地域は住民の防犯意識が高く、不審者情報が頻繁に通知され、交番や消防署も近くにあり、有志の町内見守り隊も活動しています。


 末っ子子ブタは様々な条件を勘案し、防犯的観点から熟慮に熟慮を重ねた末に、この家に住むことに決めたのでした。

 末っ子子ブタはお母さんの言い付けをしっかりと守っていたのです。


 そんなことも知らずに、盗人オオカミはこの家へとやって来てしまいました。


「くくっ、この家からも金目の物をたんまり盗み出してやるぜ。人生ちょろすぎだろ」


 しかし盗人オオカミが室内に足を踏み入れた途端に防犯べルがけたたましく鳴り響き、家中の明かりが自動点灯しました!

 映画のミッション・インポッシブルとかでよくある、赤外線センサーが反応したのです!


「な、なんだこれは!?」


 オオカミは激しく動揺してしまいました。

 足を滑らせてすってんころりん。

 床で派手に頭を打ってしまいます。


「いてててて……はっ、やべぇ! ちんたらしてないで、逃げねーと!」


 盗人オオカミは起き上がると、慌てて逃げようとします。

 しかし逃げるより先に既にセコムが駆けつけていました。


 その間、わずかに3分。

 だてにセコム特別立地ではありません!


 がんばれセコム!

 やっちゃえセコム!

 セコム! セコム! セコム!!


「な、なんでこんなに早くセコムが来るんだよ!?」


 駆けつけたセコムになす術もなく捕まったオオカミは、100番通報を受けてやってきた警察に突き出されて余罪を全部調べあげられ、懲役7年6ヶ月の実刑判決が下ったのでした。


 末っ子子ブタの財産は守られ、この後も幸せに暮らしましたとさ。


(ハッピーエンド)

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