令和おとぎ話(2)「赤ずきんちゃん」「3匹の子ブタ」「白雪姫」~現代の童話集~

マナシロカナタ✨2巻発売✨子犬を助けた~

令和おとぎ話 「赤ずきんちゃん」

赤ずきんちゃん

『もしもし、ばあちゃん。オレだよオレ、元気?』


「おや。私をばあちゃんと呼ぶということは、お前は赤ずきんかい?」


『そうそう、オレは赤ずきんだよ』


「そっちから電話してくるなんて珍しいわね。どうかしたの?」


『実はさ、オレ今ヤバいことになっててさ』


「ヤバいことって? なにがあったの?」


『実は今月の全社員の給料が入ったカバンを落としちゃってさ。今日中に500万円要るんだけど、ばあちゃんどうにかできないかな?」


「500万円だなんてそんな大金、急に言われても困るわ」


『そこをなんとか! オレこのままじゃ会社をクビになったうえに、損害賠償でヤバいことになっちゃうんだ!』


「そう言われても、森から出て町の銀行に行って下ろさないといけないし……」


『銀行には500万あるんだな? あ、上司が話したいって言うから代わるな』


「え、ええ」


『初めましておばあさん。株式会社グリムドーワで赤ずきんの上司をしております大神おおかみと申します。この度は急なお電話を差し上げて、誠に申し訳ございませんでした』


「大神さん、これはこれはご丁寧にありがとうございます。それとうちの赤ずきんが、500万円を紛失するなんて大変なことをしでかしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」


『そのことなのですがね』


「はい?」


『落とした金額は実は1000万円なのです』

「1000万円!? でもさっき500万円だって」


『ですが赤ずきんのミスは、上司である私の責任でもあります。よって私が半額の500万円を支払いますので、なんとかそちらでも500万円を用意できないでしょうか? 本日はそういう趣旨でお電話差し上げた次第なのです』


「そうですか、1000万円のところを半額の500万円で済ませていただけるというわけなのですね」


『ええ。可愛い赤ずきんのためにも何とかなりませんか?』

『ばぁちゃん頼むよ! この通り! オレを助けると思ってさ!』


「赤ずきん……大変だったでしょう。でももう大丈夫よ」

『ってことは?』


「老後の生活のためにとっておいた500万円を、今から銀行に行って下ろしてくるわね」

『マジか! 助かったよばあちゃん!』


「かわいい孫のためなんだから当然よ」

『マジサンキューな! 大好きだよばあちゃん!』


「ところで赤ずきんや」

『なんだいばあちゃん』


「今日はなんだか、普段より声が大きくないかい?」

『俺の声がよく聞こえるようにさ』


「赤ずきんや、なんだか普段としゃべり方が違わないかい?」

『大変なことをしてしまって、気が動転しているからさ』


「赤ずきんや、普段は物静かなのに今日はなんだかえらく饒舌じょうぜつじゃないかい?」

『説明しないといけないことがたくさんあるからさ』


「赤ずきんや、どうしてかけてきた電話がお前の番号じゃないんだい?」

『スマホの充電がなくなって、上司の携帯を借りているからさ』


「なるほど」

『納得してくれたかい?』


「ええ、納得したわ。あんたたちが卑劣なオレオレ詐欺のグループだってことにね!」

『ば、ばあちゃん。急に何を言って――』


「既に警察の『電話de詐欺相談専用ダイヤル』に連絡して、逆探知してもらってアンタらのアジトに警察が向かっているころだよ!」


『な、なにぃ!? てめぇ、やりやがったな!』


「そもそも」

『え?』


「うちの赤ずきんは男として生活しているけど、性転換する前は女の子だからそんな野太い声はしてないわよ! 社会のゴミクズどもが、ムショに入って懺悔ざんげしな!」


 こうして卑劣なオレオレ詐欺グループは一網打尽で逮捕され。

 おばあさんの大切な500万円は無事で、彼らオレオレ詐欺グループによって今後行われたであろう詐欺犯罪も、未然に防がれたのであった。


 めでたしめでたし。


(ハッピーエンド)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る