episode:4【音が聞こえる】
今まで気配みたいなものは感じたことがあったが、ここ最近、【音】がやたらと気になるようになってきた。
──ガタッ……タン、タン、タン、タン、タン……
明らかに誰かがいる【音】がする。下の階からガタッと聞こえ、その後、階段を軽快に上る足音がする。それは、まるで生きている人間が出す【音】と同じもの。だが、残念なことにこの場にいるのは私だけで、他に誰かがいるわけではない。いるとしたら、見えざる誰か。
「……って、ことがあったんだよ! ものすっごく怖かったんだから!!」
翌日、出勤した後輩に嘆いたら、「あー……そのレベルまで来ちゃいましたか」と涼しい顔で言われた。
後輩からすれば、亡くなった人が見えているのは当たり前で、なんら珍しいことではない。まぎれもない生まれ持った才能だ。怖いものが苦手な私からしたら、あまりうれしい才能ではないが、その才能を持った後輩は上手く自分の才能と向き合っているように思う。
「見える人のそばにいると、少しずつですけど、感性というか……上がるんですよ。まさか、数か月くらいで【音】が聞こえるようになるとは……」
「そんなことあるの!? え、このまま上がり続けたら、見えるようにならない!?」
「んー……多分、人だと認識できるレベルにはなると思いますよ」
「嫌だなぁ……。逆に、感性無くせないの?」
「それは難しいでしょうね」
「……ちなみに、このままのスピードで上がり続けたら、いつくらいに見えるようになりそう?」
「そうだなぁ……。1年後くらいかな?」
「……早っ」
── ガチャ……カタンッ……
私と後輩は顔を見合わせた。「聞こえた?」の答え合わせをするように頷き合う。
「誰か入って来ましたね」
「……まじか」
「あー、女の人ですね。あそこの席に座ってます」
「もう、実況しなくていいから!」
果たして、私にも見えるようになる日が来るのだろうか……。
音が聞こえる【完】
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