第3話大吉を引いた者同士

「おはよう。倉敷くん」

朝、登校すると隣の席に腰掛けていた真田凛桜と挨拶を交わすことになる。

「おはよう。今日も寒いね」

「ですね。家を出る時に手袋を忘れてしまって…すぐに引き返しました」

「良い判断だね。これだけ寒いと手が悴んでペンも持てないよ」

「そうですね。暖房のある学校で助かりました」

「無いところなんてあるの?」

「何処かにはあるんじゃないですか?」

「まぁそうかもね。暖かい教室で過ごせるのは感謝しか無いね」

「はい…」

真田凛桜が続きの言葉を探して思案顔を浮かべていると第三の人物が現れる。

「倉敷。ちょっと…今良い?」

一年生ながらミスコン優勝者の永瀬光は僕のことを名指しで呼びつけると廊下の方へと進んでいく。

「ちょっと行ってくるね」

真田凛桜に言葉を残すとそのまま廊下の方へと歩いていく。

「どうしたの?何かあった?」

廊下に出てすぐに永瀬光に問いかけるが彼女は何も言わずに先を進んでいく。

ついてこいと言うように軽く後ろを振り返る彼女の意思に従う。

階段を登って屋上に向かう踊り場で僕らは二人きりになる。

「なに?何かあったの?」

再び問いかけると彼女は僕にあるものを見せてくる。

「私も大吉だったの…信じられないでしょ?」

「え…」

そうして彼女のおみくじの内容を目にする。


「大吉」

「恋愛に波乱あり。成就するには苦労する」

「しかし。大吉を引いたものとは簡単に惹かれ合うだろう。相手を見つけるには注意が必要。周りをよく見ておくこと」


「倉敷も引いたんでしょ?」

「どうして知ってるの?」

「真田さんとの会話が耳に入ってきて…それに何でか分からないけれど…そこから意識するようになって…」

「そうなんだ…このおみくじの効力って怖いね…」

「本当だね…これから少しでもいいから仲良くしてくれる?」

「こちらこそって感じです」

「ありがとう。真田さんに変に思われても困るからそろそろ戻ろう」

永瀬の言葉に頷くと僕らは揃って教室に戻っていく。

教室に戻ると真田凛桜は不思議そうな表情で僕らを見つめていた。

永瀬は友人の輪に戻っていき僕は自席に腰掛けた。

「何かあったんですか?」

「う〜ん。何かあったと言えば…そうだね」

「何があったんでしょう」

「永瀬さんも同じ神社で大吉を引いたんだって」

「え…それって…」

「そうだね。真田さんのおみくじの内容と同じ感じだったよ。完全に一緒では無かったけど」

「そうなんですね…どうしよう…いきなりライバル出現か…」

「ライバルって…」

「だってそうでしょ?同じ大吉を引いた者同士なんだから」

「そうなのかな…」

そんな会話を繰り広げて朝のHRの予鈴が鳴り響く。

本日から少しだけ波乱の予感を覚えながら…。

大吉を引いた者同士の惹かれ合う日常の恋物語はまだ続く。

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