第9話 死神課の三種の神器

時は戻り約半年前


「お疲れ幸太郎!」

「ああ、未希もお疲れ!」

「良いのが撮れてるか楽しみねぇ~」

「ああ、早く家に帰って撮った映像を再生しようぜ!」

「ええ、霊が映ってれば最高の取れ高になるわよ~動画もバズるわ~」


車に乗り楽しく雑談する男女。


この二人の男女は先程まで廃墟に侵入して、YouTubeでの生放送と放送終了後に廃墟を隅々まで探索して、その様子を撮影してきた帰りなのだ。


「早くライブ終了後に撮影した分を確かめないとな!あの家に住んでた連中も俺たちの役に立つんだから、喜んでるだろうよ!」


幸太郎の発言に爆笑する未希。

「ちょっと…笑わせないでよ!お腹痛くなるじゃないの~」

「生放送では取れ高ゼロだぞ!スパチャも少なかったし…役に立たない連中だったぜ!だから殺されるんだよ!」

「そうね~早く帰って撮影した映像を確認しましょう!」

「ああ」


その後も車内の会話は…不謹慎にも程がある酷いものだった。


自宅に帰り早速映像を確認する二人


「くそぉくそぉ!」

「落ち着いてよ」

廃墟で撮影した映像を再生するも何も映ってなかったのだ。


「これじゃ動画をアップしても再生数は伸びないぞ!

「まあまあ落ち着いて、そこは編集で上手くやりましょうよ~」


未希の言葉に少し落ち着きを取り戻した幸太郎。


「ああ、そうだなぁ…面倒だが編集を頑張るか!」

「今日はもう遅いから編集は明日にして、ゆっくりと体を休めましょう~」

「そうだな…寝る前にサムネだけパパっと作るから先に寝ててくれよ」

「分かったわ~おやすみ~」

「ああ、お休み」


未希は寝室に入りベッドにダイブした。



一方その頃、

黒ずくめの男は女から1枚の紙を受け取る。


受け取った紙を隅々まで見る黒ずくめの男。


「野間くん、確かに書類は受け取りました。上司殿によろしくお伝えください」

「はい、分かりました!山本さん!お婆さんをよろしくお願いします!」


頭を下げて死神課に引き継ぎをした野間ちゃん。


無言で頷く黒ずくめの男。


「お婆さん、この全身が黒ずくめの怪しい男に付いて行ってください!」

隣にいる老婆に説明をする野間ちゃん。


「野間くん!このドクロと鎌に黒いローブは仕事着です!!!」


死神課に入る全職員に付与される伝統的な三点セット。

ドクロのお面、鎌、黒いローブ、この3点が死神課の三種の神器なのである!


「そのドクロのお面…本当にいつ見ても凄いですよね…装着すると骨にしか見えないです…」

感心する野間ちゃん。


「技術研究課の皆さんのおかげです!」

頷く野間ちゃん。


「そろそろ時間ですね…」

老婆の方に振り向く野間ちゃん。


「では、お婆さん…どーぞ…逝ってらっしゃい…」

野間ちゃんは老婆に軽く会釈をして立ち去った。


老婆は野間ちゃんの後ろ姿を見送りながら…

「ありがとうございました」


深く深くお辞儀をする老婆であった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る