第2話 付き合うことになった

 龍聖の2つ隣に座っている日野 七海は、実は中学から龍聖と同じ学校に通っている。

中学校1年生の時は同じクラスになったこともあったが、お互い面識はあっても話したことは一度もない。

しかし今この瞬間、龍聖は七海と2人きりしかいない教室で告白されたのだ。


(えっ、俺日野さんに告白された? それってマ? 夢とかじゃないよな? えっ……マ!?)


 龍聖は混乱状態に陥った。

今目の前にいる日野 七海という人物はクラスでも男女関係なく人気があり、男子の中には狙っている者もいる。

そんな人気者の七海が、なぜ龍聖に告白をしたのか……当の本人は全く理解できない。


「えっと……どう、かな?」


「どうって……。ごめん、状況がうまく掴めていないんだけど……」


「えっと……まだ伝わってない感じ、かな……?」


「つ、伝わってる! 日野さんが言ったことは理解しているから大丈夫なんだけど……。ちょっと今夢見てるのかどうか理由分からなくなってて……」


 どんどん理由が分からなくっていく龍聖の頭の中。

そんなことはつい知らず、七海はどんどん彼に近寄ってくる。


「――――? 高山くん大丈夫?」


「あ、ああ、大丈夫――――」


「じゃあもう一回言ってあげる」


「えっ――――」


「すーき!」


「なっ……!?」


 なんと、七海はもう一度龍聖に告白した。

流石にしっかりと聞こえたため、あっという間に龍聖の顔が赤くなっていく。

そして、告白した本人も顔を真っ赤にした。


「ほ、本気だからね……。嘘偽りとかないからね!」


 本気で嘘かと思っていた龍聖だが、もう一度告白されたら流石に分かる。

これは本気なのだと。


「あの、本気なのは十分に分かった! でも、本当に俺みたいなやつでも良いのか?」


「何言ってるの? わたし、ずっと前から高山くんのこと好きだったんだよ?」


「えっ?」


 意外な言葉が返ってきて、キョトンとする龍聖。

すると、七海は胸に手を持ってきて、そしてギュッと握った。


「わたしね、ずっと憧れだった。高山くんってお友達にすごい頼られてるでしょ?」


「頼られてるっていうよりは、からかわれている気がするけど……」


「まあ、確かにみんなにからかわれているところはよく見てたけど……でも、いざっっていう時は頼られる」


 七海の言う通り、龍聖は普段は友達にからかわれる存在。

しかし、話し合いや喧嘩が勃発しそうな時など、いざという時に頼られる存在でもある。

そのため、本人はそう思わなくても、実際はものすごい信頼があるヒーロー的な扱いをされているのだ。


「だから、わたしから見る高山くんは……まさに理想の人だったの」


「それで……俺に告白したってこと、か」


「うん。それで、どうかな……」


 龍聖は考える――――ことはなかった。

彼の中ではもう既に答えは出ている。


「――――俺も、ずっと前から日野さんのことが好きでした! だから、よろしくお願いします!」


 勢いよく頭を下げる龍聖。

もう彼の体は蒸発しそうなほど熱くなり、心臓も飛び出してしまいそうになった。


「えっ……ほ、本当に!? 嬉しい! じゃあ、これからよろしくね、高山くん!」


 龍聖にとって、まさに憧れでヒロイン的な存在だった七海。

そんな彼女から言われた『好き』という、たった一つの短い言葉は、2人の人生を大きく変えることとなった。

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