第5話 ついにパンツチェックの時!?
今日は土曜日。安達さんが家に来て、父さんの仕事の話を訊く流れになっている。
来てくれる時間は昼過ぎだ。母さんが礼として「ケーキを出したい」と言い出したので、それがおやつになるように時間を調整したのだ。
安達さんは快く承諾してくれた。他に気になるのは…。
「さて、午前中は一生懸命掃除しないとね!」
家族3人朝食を食べ終わった後、母さんが気合を入れる。
「おれも念には念を入れないと。…緊張するな~」
何故か当事者の俺より、父さんと母さんのほうがやる気に満ちている。
「武文。学校の宿題とはいえ、女の子が家に来るんだからちゃんとするのよ!」
「そうだぞ。“未来の彼女”になるかもしれないからな」
父さんは何言ってるんだ? 宿題の件がなくなったら、話す事は多分ないぞ。
結局、俺も父さんと母さんのやる気に誘われ、いつもより身だしなみを意識して整えた。…寝癖はないし、私服も多分問題ない。
全員昼食を早めかつ手軽に済ませた後、母さんは4人分のケーキを買いに出かけた。安達さんに時間を伝える際、ケーキの好みも聴いてるのでその辺は安心だ。
そして約束の時間10分前。いつ来てもおかしくない時間だ。
「武文。家の外で安達さんを迎えに行ってきなさい!」
「それが良いな。武文、行ってこい!」
「わかった…」
両親に言われるまま、俺は家の外に出る。
家の外に出て左右を見渡した時、安達さんがちょうど曲がり角から曲がってきた。
「こっちこっち~」
俺は一応大きめに手を振って合図する。
…彼女は私服かつ小さめのカバンを持って俺のそばに来たんだが、スカートの短さに驚いた。
え? 学校にいる時より短いんだけど? ちょっと油断するとスカートの中見えちゃうんじゃ?
「…どうかした?」
キョトンとする安達さん。
「何でもないよ」
スカートを観て思い出したんだが、安達さんのパンツについて木土君に言われたな。この状況を何とか活かせないか…?
「父さんも母さんも準備できるから上がって良いよ」
「わかった…」
安達さんは俺に付いて行く形で家に入る。
玄関に入ると、何故か父さんがいた。出迎えるようなタイプじゃないだろ!
「ようこそ!」
いつもより髭の剃り残しが少ないし、私服も気合を入れているのが一目瞭然だ。
「…お邪魔します」
父さんに向かってぺこりと頭を下げる安達さん。
「リビングまではおれがエスコートしよう。付いてきなさい」
「はい…」
俺をよそに、安達さんは靴を脱いで家に上がる。その後父さんに付いて行く。
もしかして今って絶好のチャンス? 俺は素早く靴を脱ぎ、床に這いつくばる。下からスカートの中を覗けると思ったからだ。
…ダメだな、思ったよりうまくいかない。階段だったらイケたかも?
なんてのんびりしてたらマズイ! 俺もすぐリビングに向かわないと!
リビングに向かうと、安達さんと父さんは向かい合って座っていた。すぐに彼女の隣に座る俺。母さんは既に父さんの横に着席済みだ。
「おれに答えられることは何でも答えるから、遠慮なく質問して欲しい」
父さんは笑顔で語りかける。
「はい…」
安達さんは最低限しか答えない。緊張してるのか性格なのか…。
「緊張しなくて良いからね、安達さん」
母さんも笑顔で話し、安達さんに寄り添う姿勢を見せる。
「ありがとうございます…」
いよいよインタビューが始まる。俺もいずれ安達さんのお姉さんに訊くから予習しておこう。
「えーと…、仕事の内容を教えて下さい」
筆記用具とノートをカバンから取り出した安達さんは、早速質問を始める。
「おれの仕事は“営業”だ。具体的に言わなくても、大体予想つくかもな」
「そうですね…」
俺も予想つくな。いろんな所に行ってるんだろ?
「次ですが…、やりがいを教えて下さい」
「そうだな~。取引先との交渉がうまくいった時はやりがいを感じるよ。相手がおれの言葉に心を奪われる様は快感だぞ」
「はぁ…」
「相手の歳や立場は選べないから、その時々に応じた話術が欠かせない。営業は簡単そうで難しいんだ」
「なるほど…」
安達さんは熱心にメモしている。この様子をみると、スカートの短さが信じられないぐらいだ。何かの間違いだったりする…?
これ以降、安達さんは口を開こうとしない。父さん・母さん共に彼女の次の言葉を待っているけど…。
「安達さん、他に訊きたい事はあるかな?」
しびれを切らしたのか、父さんが優しい口調で尋ねる。
「じゃあ最後に…、営業するにおいて大切な要素を教えて下さい」
「…1つ目はさっき言った“話術”だな。どんな相手ともおしゃべりできるように、日頃からニュースをチェックするといい」
「はい…」
「2つ目は“体力”だ。これはどの仕事にも言えるだろうな。ジムとか難しい事は考えず、徒歩や自転車移動をうまく取り入れたらどうだろう?」
「…そうさせてもらいます」
「最後は“パソコンのスキル”だな。書類を作るのに絶対必要な能力だ。最近の子はスマホばかり使ってるから、練習しないと大変かもしれないぞ」
「少しずつ勉強します…」
それは俺にも言える事だし、意識しておこうか。
「…以上で質問は終わりです。ありがとうございました」
着席した状態で頭を下げる安達さん。
「少しでも役に立てたら幸いだ」
俺の予想以上に、父さんはちゃんと答えてくれたな…。
「安達さん、堅苦しい事はこれでおしまい。ケーキを用意するから待っててね」
「はい、ありがとうございます…」
母さんは椅子から立ち上がり、キッチンに向かって行った。
安達さんのおかげで、インタビューの感じが分かったぞ。俺も真似させてもらおう。
そして数分後…。
「お待たせ~」
母さんがケーキと飲み物を持って戻ってきた。ここからはおやつの時間だ。
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