第4話 家に呼びなさい!

 放課後になって帰宅した俺。今日の現代文で安達さんと話した事を父さんに伝えないとな。


そして父さん・母さん・俺の3人で済ませる夕食時。


「武文。昨日の件はどうなった?」


父さんから話を振ってくれた。


「ちゃんと聞いてきたし、話し合ってきた」


「そうか」


「期限は“今年中”になるんだって。余裕あるから、父さんの好きなタイミングを教えて欲しい」


「そうだな~。来週の土曜はどうだ?」


「来週で良いの? もっと後でも良いのに…」


「早めに終わらせた方が良いんじゃないか? 先送りする癖がつくと面倒だぞ」


一理あるな。それに長引くと忘れる可能性も出てくる。


「父さんの言う通りだから、安達さんにそう伝えるよ」


「場所はどうする? その安達さんをここに呼ぶか? 仲良くない男の家を嫌がる事を考えて喫茶店でも良いが…」


「それも伝えないとな。ちなみに、父さんはどっちが良いの?」


「おれは断然家派だ。周りを気にせず話せるじゃないか!」


「お父さん何を話す気なの…?」

隣の席にいる母さんがツッコむ。


「別に変なこと話すつもりはないぞ、母さん」


…母さんの半信半疑の様子は変わらない。


「家で話す時はわたしも同席するわ」


さて、明日安達さんに伝える事は2つだな。1つ目は日時だ。来週の土曜がOKかどうかを確認しないと。


2つ目は場所だ。家か喫茶店、安達さんはどっちを選ぶかな?



 翌日。今日も現代文の時間を迎える。


「話し合いの時間は今日と次回で最後にする。残りは休憩時間に各自で話し合うように」


教壇にいる綾部先生が俺達を見て言った。


…今回も隣の席の安達さんと机を合わせている状態だ。


「安達さん、昨日の事父さんに伝えたよ」


「…どうだった?」


「来週の土曜を提案されたんだけど、予定大丈夫?」


「…うん、大丈夫だよ」


「そうか良かった。次は場所なんだけど、俺の家は…嫌だよね?」


逆の立場なら俺は難なくOKするが、相手は女子だから思う事があるだろう。


「そんな事ない。松田君の家でお願い」


「え? ホントに良いの?」

思ったより早い回答なので聞き返してしまった。


「良いけど…」


これで父さんが望む形になったな。同時に母さんの同席に決定した。


「俺達は同じ中学だし、住所を伝えれば大体わかるよね?」


「多分…。松田君の家は一軒家?」


「そうだよ。住宅街だけど迷う事はないと思う」


問題はなくなったので、俺の家の住所を安達さんに教えた。


「…松田君には悪いけど、私の家の住所を教えるか迷ってるの」


仲良くない人に個人情報を教えたくないのは当然だ。責めるつもりはない。


「全然気にしてないから大丈夫だよ」


「ごめんね。お姉ちゃんの都合と私達の都合が合うかわからないから、家で話を聴けるかわからないの。だから…」


「そういう事だったんだね。納得だよ」


安達さんのお姉さんの話を聴くのは喫茶店が有力と…。別に静かな所ならどこでも良いけどな。



 こうして、来週の土曜に安達さんと一緒に父さんの話を聴く事になった。一体どういう話になるのか、その時を楽しみにしておこう。

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