第2話 意外なチャンスが舞い降りる

 クラスメートの木土きつち君に、安達あだちさんがエロいパンツを穿いている噂の調査を依頼された俺。


安達さんは俺と同じ中学出身かつクラスメートだが、それだけの関係だ。中学の時に同じクラスになった事は1度もなく、中学を通して会話した事もない。


一体どうすれば、彼女のパンツを見たり訊いたりできる? 俺は途方に暮れながら、授業をこなしていく…。



 時は流れ、帰りのホームルームの時間になった。これが終われば放課後になる。


「もうそろそろGWゴールデンウィークだが、新1年生にちょっとした宿題がある」

担任の綾部先生が言う。


4月上旬に入学式をやって約2週間経過してるので、先生の言っている事は間違っていないが…。


「え~」

木土君を始め、お調子者に属する男子が文句を付ける。


「お前達がそう言いたくなる気持ちはわかるが、将来を考えてもらわないとな。1年生だからと油断してると、いざという時困るぞ」


「……」

それでも木土君達は納得してなさそうだ。


父さん・母さんは「1年はあっという間だ」を口癖にしてるが、俺はそう思わないんだよな。先生はおっさんだし、俺達生徒と考えのズレがあるかもしれない。


「宿題の内容は『ご両親以外の大人から仕事に関する話を聴いてまとめる』だ。内容とかやりがいを尋ねて、生の声を聞いて欲しい」


両親以外? 宿題は仕方ないが、せめてぼっちに出来る内容にしてくれよ…。


「親がダメなら親戚で良いっすよね~?」

木土君が先生に質問する。


「それは最後の手段だな。親戚は血の繋がりがある以上、新たな発見になりにくいからだ」


そういう趣旨があるのか。深い意味があるようだ。


「自由にさせると余る生徒が出るかもしれないから、今回は先生が組む相手を決めさせてもらうぞ」


ぼっちでコミュ障の俺は、そのほうがありがたい。


「組む相手は…“同じ中学出身”にしようか」


このクラスに俺と同じ中学出身は安達さんしかいない。つまり、彼女の周りにいる大人から仕事に関する話を聴く事になる。


これって、安達さんとの距離を縮めるチャンスだよな? パンツの事を知るきっかけに繋がるはずだ。


「該当者同士が隣になるよう、今から席替えを行う」


そう宣言した後、先生は黒板に手書きの座席表を書き始める…。



 ……俺と安達さんは、本当に隣同士になった。運は味方してるとはいえ、問題は山積みだ。


俺が彼女をチラ見した時、同じように返された。悪い反応じゃないよな?


「明日の現代文は宿題について、机を向かい合わせて話し合ってもらうぞ。締め切りとかの詳しい話もそこで言う」


1対1で話し合いか。それも嫌なんだけど…。


「これで帰りのホームルームは終わりだ。気を付けて帰れよ」

先生は早々に教室を出て行った。



 放課後になり、俺はいつも通り教室を出た。安達さんの周りにいる大人から仕事の話を聴く…。普通に考えればお父さんになると思うが、どういうタイプかな?


超が付く程の堅物とか? 彼女同様無口系かも? 何にせよ、簡単にはいかないだろう。場合によっては、俺から話しかけて会話をリードしないと。


難題ばかりだな…。俺は心の中でぼやきながら帰宅するのだった。

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