君のスカートの中を知りたくて

あかせ

第1話 パンツの真相

 「なぁ、松田まつだ君って安達あだちさんと同じ中学だったよな?」


体育の前の休憩時間、教室で着替え終わった時にクラスメートの木土きつち君が声をかけてきた。


「そうだけど?」


俺の返事後、彼と一緒に林山はやしやま君がそばに来る。


俺が高校に入学して、2週間ぐらい経ったかな。それぐらい経てば、クラスメートの顔・名前・大体の特徴は把握済みだ。


俺は無口でコミュ障だから、自分から声をかけることは滅多にない。そのせいで友達は0だが、今の世の中スマホが万能だから退屈しないし、このままで良いと思っている。


「オレ、この間階段で安達さんのパンツをチラ見したんだよ」

ニヤニヤする木土君。


「へぇ~」


女子は更衣室で着替えるから、教室にいるのは男子だけ。だからこういう話を遠慮なくできるのだ。


「安達さんって、大人しそうな割にスカート短めだよな」


林山君の言う通り、彼女の外見・タイプは“文学少女”になると思う。先生に当てられた時と近くを通るぐらいしか、安達さんの声を聴く機会はない。


彼女のスカートの長さは周りと同じぐらいに見える。『物静かな人』の枠で考えれば短いかもな。


「そのおかげで、オレ以外にも安達さんのパンツを見た奴はいるんだ。松田君知ってたか?」


「知らなかったよ…」

安達さんのパンツを見た自慢をしたいだけか?


「こういうエロ話はクラスの垣根を越えて伝わるんだが、安達さんにはある噂があってな」


「噂?」

噂されるタイプには見えないけど…。


「ああ。安達さんらしくないエロいパンツを穿いてるらしい」


「らしい? 木土君は直接見たんでしょ?」

なんで伝聞になってるんだ?


「さっき言ったろ“チラ見”だって。ハッキリ見えた訳じゃないんだ。他の連中も似たような感じらしい」


「ふ~ん」

ガードは固いのにスカートは短いって、なんか矛盾してるよな?



 「そこでだ、安達さんと同じ中学の松田君に協力してもらいたい」


「協力?」

木土君は何を言う気だ?


「安達さんのパンツをじっくり見るなり、噂の真相を訊くなりして欲しい」


「できる訳ないでしょ!? 俺と安達さんは同じ中学出身でも、話した事ないんだから」


中学の時に同じクラスになった事もないし、接点は本当に0だ。


「それは男子全員同じだ。松田君はオレらと違って共通点がある。頑張ればイケるって!」


無茶苦茶な事言うよな…。


「木土ほどじゃないが、おれも気になってるんだ。力を貸してくれると嬉しいよ」

聞き手に回っていた林山君が口を開く。


「なぁ、頼むよ~。気長に待つからさ~」


このまま断っても、木土君の事だ。しつこく頼んでくるに決まってる。時間制限がないなら、承諾してから適当にごまかせるよな?


「…わかったけど、本当に期待しないでくれよ?」


「それでも助かるわ~」


俺の想像以上にお調子者だな、木土君は。



 【キーンコーンカーンコーン】


授業を始めるチャイムが鳴る。気付けば、教室にいるのは俺達3人だけだ。


「やば! 話が長引いたぜ! 松田君・林山。すぐにグラウンドに行くぞ!」


「うん」

「ああ」


先導する木土君に付いて行く、俺と林山君。


それにしても、安達さんのエロいパンツか…。俺も男だからそういう話は興味あるけど、どうすれば真相を知る事ができるんだ?


まったく見当がつかないまま、俺達は昇降口に向かうのだった。

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