長詩『朝を吸う』

ヒニヨル

長詩『朝を吸う』

冷たい空気に身体を震わせながら

わたしは、そっと

あたたかいものから離れる


夜になると溜め込んでしまうから

わたしの中は

わたしでは無い何かで

満たされてしまう


窓ガラス越しに

朝焼けを見つめる

山のシルエット、

幾重にも連なる

静謐せいひつな目覚めの色


シャワーを浴びても

取り払えないよどんだものを

わたしはいつも呼吸をする事で

入れ換える


鼻から吸うと、少し痛みを伴って

脳に冷たさが広がる

あなたがわたしに言った

何気ない言葉が静まる


吐き出して、

もう一度吸う

肺に冷たさが広がる

あなたで熱くなった胸が

冷静さを取り戻す


ただ吸って、吐くだけの行為が

わたしを改めていく


心無しか目が潤む

冬の朝は、わたしを

冷たい優しさで

包んでくれるから好き


わたしはいつも

あたたかくて、生ぬるい

居心地を求めてしまう


誰かがそんな事をしていても

わたしは咎める事をしないけれど

この世界は

甘さに浸っている人間を

放っておいてはくれない


だから、

わたしはこうして

静かな冬の朝を過ごす


一日のはじまりを

微笑んでいられるように。



     Fin.





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長詩『朝を吸う』 ヒニヨル @hiniyoru

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