また明日
汐なぎ(うしおなぎ)
全一話
もう半年。少女の母親は、ずっと病院のベッドの上にいる。
母親は治る見込みのない難病で、いつ死んでもおかしくないと医者は言う。
母親はそれを知らない。
しかし、少女は知っている。
面会時間が終わり、少女は母親に声をかける。
「また明日」
そして、少女は母親の手を握る。
「また明日」
母親はそう言って、少女の手を握り返す。
そして、包み込むように、もう片方の手を添える。
同じ言葉をかけあう二人。
しかし、少女の言う「また明日」と、母親の言う「また明日」の意味は、大きく違っていた。
明日が来ることを願いたい者。
そして、明日が来ることを疑わない者。
「じゃあ」
少女は、母親の手を優しくほどくと、にっこりと笑って見せる。
「またね」
母親は、そう言うと、少女に向けて手を振る。
少女も母親に手を振り返すと、後ろ髪を引かれる思いで、病室を後にした。
そして、少女は、ひっそりと涙を流し、心の中で祈る。
いつまでも、母親に明日がある事を願って。
また明日 汐なぎ(うしおなぎ) @ushionagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます