第30話 リミッター解除

「リミッター解除」


 本体からの魔力的なパスを通じて、ゴーレムのボディに科せられていた制御装置を解除する。

 バチンと何かが弾けた音と同時に、ゴーレムの身体が徐々に熱を帯び始める。

 こいつを修復していた際、コアの出力に耐えられず、左腕を破損させてしまうことがあった。

 人間と比較すれば、格段に頑丈なゴーレムボディだが、自分自身の出せる出力で考えてみれば、まだまだ強度が足りていないのだ。

 だが、ほんのわずかな時間であれば、本体の損耗を無視して、最大出力で戦うこともできるはず。


「短時間でケリをつける」


 全身を赤紫色に発光させた俺は、先ほどに倍する速度で飛び上がった。

 そのままの勢いで、ターゲットをミサへと変えようとしていたドランゴの横っ腹に体当たりをかます。


「ぎゃやああああああっ!!!?」


 攻撃に耐えきれず、渓谷の壁へと激突するドラゴン。

 よし、この状態の攻撃ならば、ドラゴンにもダメージが通る。

 

「がぁああああああ!!!!」


 だが、今の一撃がドラゴンの逆鱗に触れたらしい。

 猛禽類めいた金色の瞳の虹彩が窄まる。

 瞬間、魔力が体内に凝縮されていくのがわかった。

 こうなれば、奴のしてくる攻撃は一つ。


「ブレスか!?」


 ドラゴンの必殺技と言えば、口から吐くブレス攻撃だと相場が決まっている。

 俺は崖の壁面を蹴ると、再び跳躍した。

 奴は俺を狙っている。

 ミサから距離を取らなければ。

 魔力の収束具合から、発射までの時間はおおよそわかる。

 三角跳びの要領で、壁を蹴りつつ、発射のカウンドダウンに備える。

 3……2……1……来る!!


「ごぁああああああああ!!!!!」


 天を衝くような方向とともに発射されたのは、極太のまさにレーザー光線とでも言えるような魔力の塊だった。

 避けられない。

 そう悟った俺は、ゴーレムのエネルギーを両腕に集中する。

 大剣の腹を盾がわりにし、身体をできる限り縮こまらせた。

 そして、暴力的な光の帯が、ゴーレムの身体を飲み込んだのだった。

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