第11話 雅史の提案

 雅史は黒板の前に立った。

大きな丸を書いた。丸に線を入れ、10%軍隊、50%農業、20%工業、15%商業、サービス業、5%その他と書き込んだ。


「だいたい、こんな数字だと思う。君たちは、この数字をどう思うかな。どの部分に関心、興味があるかな」


「う~ん」


「柴田はどうかな」


「うっす、軍隊かな・・・・」


「阿部さんはどうかな」


「う~ん、やっぱり軍隊かな」


「うん、軍隊ね。身近で訓練も見ているし、毎週トーナメントもある。月一のトーナメントも、見所があるしね」


「先生も出るんでしょう」


「うん」


「出たくないの?」


「出来れば・・・・」


贅沢ぜいたく言ってらあ~、出たくとも出られない人ばっかりなのに」


「先生に勝てる人は、いないもんね」


 そんな田中先生を誇らしく思う反面、普通の人からすると『わがまま』『気まぐれ』時には『不遜』と映るようだ。



「確かに、軍、武力だな、それは人をきつけるものがある。那珂国を支える重要な部署でもある。特に南郷の連中は、好戦的だからね。那珂国を守るには、軍隊は必要不可欠だ。

だがね、軍、戦争は何をもたらす。

死、破壊、消失、憎しみ、悲しみ・・・・何も生み出さない。無くすものばかりだ。では、農業、工業、商業などはどうか。聞くまでも無いだろ、生み出すものだ。

どちらがより尊い、より重要かというと、僕としては農業、工業なんだな。武力は自分を犠牲にしてまで、それら農業などを守る。その行為は尊いし、見て時に感動的だ。しかしね、僕には『死の遊戯』に見えてしまうんだよ。

別に、武力、訓練に励む練習生をバカにしてるんじゃないよ。彼らが真摯に訓練に励んでいるのは、知っている。ただ、彼らのしている事が死と直結しているからさ、見ていて辛いんだ」


突然、沙羅が立ち上がり拍手をした。


「素晴らしい。立派な見解だと思います」


全員が立ち上がり、拍手をした。


「見直したわ。セクハラ教師とばっかり思ってましてよ」


「別人みたいだ」


「でも、軍隊が農業を守るなら、間接的に農業の生産性に従事することじゃないかしら。だったら、軍はプラスで良いんじゃないかな」


「うん、そういう肯定的な見解もある。否定はしないよ。ただね、親衛隊ね~。軍隊の真似事というのがね~。体育で軍事訓練モドキの教科もあるしね」


「先生は、そういうのが嫌いなんだ」


「クラブ活動みたいなものなら、どうです」


「うん、いいと思う」


「クラブ活動・・・・」


 皆が思いを巡らせていた。サッカー、バスケットボール、バレーボール、テニス、卓球、ラグビー、野球、ソフトボールなど。


 

「相撲はどうかな」


相撲、ぶつかり合い、引き付け合い、突っ張り、砂まみれ、汗まみれ、やわ肉で密着、裸で密着、ふんどし、ふんどしに着替え、露出が多い。


「いやぁ~」「いやらしい~」「すけべ~」


女子から悲鳴が上がった。


「やっぱりヘンタイだ~」


「田中先生、前言撤回!。穢らわしい」


「え~、そんな~。相撲は神聖な競技だよ~。君たち、受け取り方ヘンだよ。なあ~」


雅史は男子に同意を求めた。男子たちは「うっす」「うん」「うん」と頷いている。


「とにかく、相撲はダメ」


「そうか~残念」


 

 協議の結果、放課後のクラブ活動は『ソフトボール』となった。

サッカー、ラグビーなどは試合中マラソンのように走り通し、その上に玉を蹴る、扱う→キツイ。バレーボール、バスケ→大変そう。

テニス、卓球→イメージ、暗い。相撲→論外。


 

 結果、適度にインターバルがあり、玉が来なければ身体的負担は無いし、だが適度な集中力を、判断力を必要とし。チームワークを必要とし、適度に楽しむ感覚でやろうとなった。

より先鋭化した野球よりも、ソフトボールの方が良いだろうとなった。



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