第4話 クラスの対抗意識


 柴田と今井が昼休みに、組長の阿部綾に相談をしていた。


「どうも、しゃくに触る。そこでだ」


「先公の弱点を考えた」


「女だ」


「そこで、こんなことを考えた」


 柴田は、帳面をちぎったと思われる紙切れを取り出した。そこには、ミミズがのたくったような字で『先生が、ここに来た時から注目していました。今、身近で先生の教えをたまわり、望外の幸せです。お慕いしています。     あや

これは、私からのプレゼント。先生が好きらしいから  ♥ 』

と、あった。


「何これ、プレゼントって、『あや』って私の名前?」


「まあまあ、プレゼントは赤いスケスケのパンティ。『あや』は仮の名前」


「何考えてるのよ!、バカにしてんじゃないわよ。私は赤のスケスケなんて穿いてない!」


「まあ、お母さんのでもいいから。分からないし」


「何言ってんの。私の母のは、肌色のぶかぶかだよ。先生喜ばないわよ」


「う~ん」


 3人は考え込んでしまった。身近でそんな妖しげなパンティを穿く女の人は、パッと思いつかない。そもそも、目撃してない。


「ん、そうだ。宮原さおりさんから借りよう。うん」


「そりゃいい。名案だ」


「う~ん」


「なあ、阿部さん。頼むよ、お願いします」


「お願いします」


「俺たちは、あのヘラヘラした先公に一矢いっしむくいたいだけなんだ。頼むよ」


「う~ん、しょうがないわねぇ」


 

翌日の朝、雅史は下駄箱からラブレターらしき物を発見した。


朝のホームルームのチャイムが鳴ると、がらがらと引き戸が開き雅史が入って来た。

教室が驚愕した。雅史は、パンティを被って現れたのだ。


「出席を取ります」


「何言ってんだー!。気は確かか~」


「キャー」「いや~ヘンタイ~」「それでも教師か~」「ありえない~」「信じられない~」「恥ずかしくないの~」「止めて~」「恥を知れ~、ヘンタイ教師~」「どすけべ~」


ありとあらゆる非難、怒号が飛び交い3Cは騒然となった。


 

 と、突然、ガラガラピッシャンと引き戸が開き、隣Bクラスのベテラン教師、高橋すず先生が顔を覗かせた。


「毎度毎度、騒々しい。いい加減にしなさい。何騒いでいるのですか」


以前からのうっぷんがあったらしい。仁王立ちで険しい顔をしていた。


「先生、その頭にあるのは何ですか?・・・・い、いや~、け、汚らわしい~」


高橋先生は、よろよろと廊下に出た。


「待ってください。誤解です」


3B生徒の見物人が、廊下まではみ出ていた。


「誤解も六回もあるか~、は、恥を知れ~ヘンタイー!」


「待って下さい。これ、帽子です」


「ふ、ふ、ふ・・・・ふざけ・・・・」


アワを噴かんばかりに、ワナワナと震える担任教師の危機を感じたのか、一人の生徒が「ヘンタイ~」と叫び、エンピツを投げつけた。


それをきっかけに、わらわらとエンピツ、消しゴム、ノート、教科書が飛び、「ヘンタイ」「どスケベ―」「恥知らず―」「クズ教師~」など怒号が飛んだ。


騒ぎを聞きつけ3C組も廊下に出て来た。担任教師が攻撃を受けている。日頃の3Bの見下した態度のうっぷんも絡まり、3C組が応戦に出た。

最初はエンピツ、ノートだったが、それが尽きるとカバンを投げあった。その内、イスが登場、机もとエスカレートし、窓ガラスが割れ、引き戸が飛び惨憺たる様相を帯びてきた。

騒ぎは「わあ~」「わあ~」「きゃ~」「きゃ~」ますます大きくなり、校長、教頭、先生方、生徒たち、終いには訓練部隊の隊員まで出てきた。


 本日の授業は中止となり、3B組は教師も含めて自宅謹慎1日。3C組は、教師を含み自宅謹慎3日、謹慎開けまでに反省文を校長まで提出の事となった。

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