書初める《短編フェス応募作》
亜夷舞モコ/えず
書初める(テーマ:スタート)
始めようとしてみる。書き始めようとしてみる。でも、始めようとしてみたときには、それはすでに始まっていて、始めることを始めることはできなくなってしまっていて、それはもう始められない。では、諦めることを始められるかと言えば、それも始められるわけではなくて、やめ始めることも、やめることを始めることもできず、ただやみくもに宙を掻くしかない。掻くことはできるらしい。書くことはできずとも。藻掻き、悩むことはできる。水でもないのに、溺れることはできるみたいだ。溺れるのに、『始める』はいらないから。それが起きる頃には、もう水の中に沈み始めている。始めるがないままに、終わっている。終わっているからこそ、文は生まれている。生まれ始めることもなく、生まれている。出来ている。書かれている。スタートのボタンを押すまでもなく、ひらがなとアルファベットの書かれたボタンを触るだけ。生まれていた文字を並べるだけ。あとは簡単に紡ぐだけ。紡がれ始める時を待たず、紡がれていくだけの文字――
書初める《短編フェス応募作》 亜夷舞モコ/えず @ezu_yoryo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます