第2話
「あの新人教師糞なんですけどぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!」
「お、おおおおお、落ち着いてレイナ!! 深呼吸深呼吸!!」
やっと授業が終わり、今は寮へと戻っている途中の森の中。
レイナの叫び声が周りに響き渡っていた。
この学校は寮が完備されており、劣等生である私達にも準備はされている。ただ、一番学校から遠い。
学校の裏手を通り、真っすぐ行くとぼろいお屋敷のような寮が現れる。そこが私達が住んでいる寮。
ほんと、F組というだけでこの扱いの差よ。
他のクラスの寮は、学校へ徒歩五分で着く程近い。
私達F組は、片道二十分もかかる寮なのに。
レイナと話をして登下校をするのも楽しいから、別にこれに関してはもう何も思わない。
文句はないんだけど、今のレイナとは話すのがとても怖い。
何時ものように話せない。
その理由は、今日来た新人教師であるナギサ・シイナの授業が超スパルタだったから。
「私達を拘束したかと思えば、普通に授業始めるし。実技では私達がさぼれば魔法で脅してくるし。しかも、あの黒い笑み!! 本当に怖かった!! 殺されるかと思ったよ!! あれは絶対に普通の教師の目じゃなかった!!」
「確かにあれは本当に怖かった。逆らったら何をされるかわからなかったもんね…………」
あの先生の黒い笑み、本当に体が震えるほど怖かった。
他の生徒達も震えあがってたもん。
あれって、本当にただの教師なの?
まさか、暗殺者が潜入のために来たとか?
「――――でも、初めてじゃない?」
「え、何が?」
怒りを吐き出すように叫び散らしていたレイナが、私が足を止めた事で一歩先で止まる。
「あんなさ、私達を見て強制的にしろ、授業を必死に受けさせようとしてきた先生。今までいなかったよね」
今までの先生は、来た時からもう諦めている感じだったし、実際授業も真面目になんてしなかった。
だから、私も真面目になんて受けなかったし、やりたくなかった。
でも、あの先生は違う。
強制的で乱暴でむかつくけど、諦めていなかった。
絶対に、私達に授業を受けさせるっていう気持ちがあった。
それに――……
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『おや、リヒト・ルーチェ。どうしたのですか?』
私が実技授業の時、何もしないで時間が経つのを待っていると、先生が声をかけてきた。
『別に。私にこの授業は意味ないから時間が経つのを待ってただけ』
『それはなぜ?』
『聞いてないの? 私、全く魔法が使えないの』
これを言うと、先生は鳩が豆鉄砲でも食らったような顔を浮かべた。
でも、その後すぐに考えて、私に色んなアドバイスをしてくれたんだよね。
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まぁ、結局、そのアドバイスは無駄なんだけど。
私に魔法は使えない。
なら、なんで魔法学校にいるのか。
なんで、魔法学校に入ったのか。
それは、私の親のせい。
私の家庭は代々大魔法士が生まれ、魔法で人々を救い金を貰う事を生業としていた。
今まで通りなら姉弟の中で一番魔力の量が多い人や、魔法の扱いに優れた人を選別して魔法学校に入れ育てていたみたいだけど、私に姉弟はいない。
お母さんは私を生んですぐに他界。
魔法を扱えない私が家族を守るには、魔法を使えるようになって大魔法士にならないといけないらしい。
だから、金に物を言わせて私を無理やり魔法学校に入れたの。
でも、一般クラスだったらすぐに私がズルをして入ったとわかるから、そこは孤立しているF組に入れて怪しまれないように魔法を身に付けろとの事。
でも、私は全くやる気ない、今までの先生もすぐに諦めていた。
私は、この学校を卒業するのと同時に親や家族に見捨てられるんだろうなぁ。
「リヒト? 何考えてるの?」
「……………………ううん、何でもない。早く寮に帰ろうか」
「う、うん」
また歩き出しすと、寮へと辿り着いた。
何時ものように部屋に戻り、明日の学校の準備。
全ての準備が終わり、ベットにダイブ。
「………………………………先生のアドバイス。試してみようかな」
※
夜中、こっそり寮から抜け出してみた。
警備もずさんだからすぐに抜け出せる。
森の中を歩けば、少し開けた所があるのは知っているし、寮から近いからすぐにたどり着いた。
「ここなら、魔法を扱っても問題はない」
周りは木々に囲まれているし、今は夜中だから誰も来ない。
魔法を放てる場所として最適だ。
「とは言っても、私は魔法が使えないんだけどさ」
一応、魔法を扱う時に使用するステッキは持ってきた。
これに魔力を込め、自分の属性魔法を放つ。
でも、私はその魔力すらわからない。
魔力という目に見えないものを、みんなはどうやって操っているんだろう。
「……………………先生のアドバイス通りにやってみるかな」
今日、先生は出来ない私に色んなアドバイスをしてくれた。
魔力は、体を纏っているオーラの事を指す。
目には見えないが誰の身体にも魔力は巡り、誰もが操る事が出来る。
意識すれば微かにオーラを感じる事が出来るみたいだけど、私は感じない。
目を閉じ、一か所だけでも集中すれば感じないかなとも言われたからやってみるが、無理。何も感じない。
次に、オーラを感じないのなら血液を代用してイメージしてみろとも言っていたけど、それもよくわからなくて難しい。
今も目を閉じ同じように息を整え、右手に纏われているであろうオーラに集中するが、やっぱりわからない。
「――――やっぱり、私には無理なんだ」
どうせ、私は劣等生。
何も出来ない、努力しても意味はない。
やっぱり、諦めた方が色々とらくっ――……
「やはり魔法を出せないのは、単純にイメージが出来ていないだけっぽいですね」
――――――――ん?
後ろから声が聞こえ振り向くと、そこには腕を組み私を見下ろしているシイナ先生……。
「キ、キャァァァァァァァァァアアア!!!!!」
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