第5話

ゲームは1対1の対戦式だった。昔からこの手のゲームは大得意。最初はギルティが優勢だったものの終盤でコツを掴んだジャルダンが逆転勝ちした。

ウォーっと声援が上がり盛り上がっていると共用スペースの扉が開いた。寮はクラスごとに棟となっていて共用スペースからそれぞれ男子部屋、女子部屋へと移動する。ジャルダンはもしかしたらさっきのフードのやつかもしれないと思い振り返った。そこにいたのはテロン・ロゼリティだった。冷ややかな目をこちらに向けてすぐに自分の部屋の方へと去っていった。


「あいつ生意気なんだよな〜、平民のくせして。もっと下手に出る態度みせろよな笑」


ゲームをしていたうちの一人がそう言うと何人かが共感するように頷いた。ギルティは先ほど負けたのがよほど悔しいのかソファに寝転がりクッションに頭を疼くめていた。貴族の子供が平民をバカにしたような態度をとるのはもはや当たり前のことだった。なぜなら親が幼少期からそう教え込むから。貴族の方が平民より素晴らしいことは生まれた時から決まっていることである。ジャルダンも幼い頃からそう教えられてきて実際、この考えはジャルダンの思考に根付いている。だが、この考えは魔法が世界の中心にあり、その魔法を扱えるのが貴族だからである。では、魔法が使える平民はどうなるのだ。


過去にはテロン以外にも魔力を持った平民がいた。10年も前のことだ。だが、その平民はトリザー学園を卒業した後、国から理不尽な仕事を与えられこき使われて亡くなった。これは国の文書に堂々と書いてあったものでこの方針が正しいと容認されていることの証明であった。つまりテロンは卒業と同時に地獄の生活が始まるのだ。ジャルダンはそのことを考えるとなんだか胸がモヤっとするのを感じた。


次の日の朝、いつものようにギルティは遅刻し今日もお腹が空いたと言いながら教室へやってきた。朝礼もはやばやと終わり、昨日のように今日も朝から飛行訓練の授業がある。グラウンドに移動すると先生が生徒へ集まるように集合をかけた。


「みなさん、今から1週間後の授業では箒で学校の隣にある深淵の森の手前まで一緒に行ってみるねん。校舎の上を通っていくからそこまでは上がれるようにしておいてねん。少し厳しく感じるかもしれないけど飛行魔法はあくまでも基礎魔法、その中でも箒を使って飛ぶのは初歩の初歩。箒なしで飛べたり空飛ぶ馬車で飛べるようになったりもいずれはならなくてはならないねん。だからファイトねん♪」


この宣言を受け、皆んながチラチラとトゥールを見た。なぜならトゥールが1週間以内にこの課題をクリアできるとは思えないからだ。同情の目を向けるものもいればあざ笑うもの、興味もなさそうなものと反応は様々である。ただ一つ確かなのはこの状況で誰も手を差し伸べたりはしないと言うこと。落ちゆくものに無駄に関わったりはしない。そうやって助けられることもなく絶望に打ちひしがれ没落していく貴族をジャルダンはたくさんみてきた。だが、状況は同じであれどトゥールからは没落貴族とは思えない何かを感じていた。


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