第2話
ガラッ、
担任のイギャリティ先生がドアを開けた。
「おはよう、今日も君たちはこの王国のトップに立つ人間であることを自覚して過ごすように連絡事項は特にない、以上だ。」
肩まで無造作に伸ばした髪から覗く同じく黒の瞳は鋭く低い声と相まっていつものことながらなかなかの迫力だ。必要事項だけ述べて先生が出て行った後、教室はすぐにザワザワしだした。
「いや〜、あの先生は朝礼が終わるの早くていいな!となりのクラスの担任なんて朝からめちゃくちゃ熱血らしいぞ、温度差やばいな!」
ギルティがすぐに話しかけてきた。
「暑苦しいのは嫌いなんだ、ちょうどいい。」
「あはは、相変わらずつめてーな、こんな冷たいのに炎属性なんて人生ってわかんないもんだよなー。」
「バカか、魔法は性質もほぼ遺伝なんだよ、性格は関係ない、そんなことよりさっさとグラウンドに出るぞ、飛行魔法の訓練が始まる。」
「はいほーい♪」
グラウンドへ移動すると箒がすでに隅の方に積まれていた。そちらに少し目をやると1本の箒がまっすぐジャルダンの方へ飛んできてすっぽりと手に収まった。
「ひゅー、かっこいぃ♪」
余計なことを言ってくるギルティとキャーキャー騒ぐ女子にジャルダンは冷たい目線を送った。
「まぁ、ジャルダンは優秀ねん!素晴らしいん!他の皆さんも座学で習った通りに強く念じて箒を呼び寄せて下さいん。授業を始めますわよん!」
どこからか見ていたらしい、語尾が独特な飛行授業の先生の声により訓練が開始された。
飛行魔法の初歩中の初歩である箒を呼び寄せるのも簡単ではない。体の中で渦巻く魔力を心臓のあたりに集中し強く箒が来るように念じるのだ。初めこそ集中力を使うが慣れてきたら誰でもどうってことはなくなる。事実、家庭でそれなりの魔法教育を受けているギルティはすでに箒は手元にあるし同様であろう他のクラスメイトも順々にクリアしていった。
だが、1人だけまだ手こずっているものがいる。
トゥール・アムマラドアだ。肩までのウェーブした金髪を揺らしながら必死に念じているのがわかる。だが最後のポツンと残された箒は微動だにしない。
「あぁ、やっぱあの子がアムマラドア家の出来損ないね笑、今まで座学だけだったから分からなかったけれどこんな単純な魔法さえ使えないなんてそうに決まっているわ笑。」
「魔力量ちゃんとあるのかしら、噂ではギリギリだったって。出来の良いお兄様に全部取られちゃったのかしら笑」
声がする方を見ると女子達がヒソヒソ声とは言えない声で話していた。
「うぁっちゃー、あの子大丈夫かね、泣いちゃうんじゃない?」
心配気に言うギルティの話を聞きながら再びトゥールに目をやるとただひたすらに懸命に念じているのはよくわかった。
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