6 邂逅(5)

(どうすれば良いんだ…。)


マグディスはしゃがみ込んで頭を抱えたくなった。

周囲全て、年下と思われる貴族の娘に囲まれ、そして質問責めに遭っていた。

生活環境、趣味趣向、服装、食事、過去の話、道中の話。それら全て、何を答えても『好意的な返事が返ってくる』。問題は、その後に続く、


「良ければこの後、私の屋敷の方でもっとお話ししていただけませんか?」


等の誘いである。頷く訳にはいかない。かと言って、ぞんざいに扱えば、近くにいる親、つまり貴族本人から何を言われるか分かったものではない。

性質が悪いのは、これに加えて酒も『もっとお飲みになって?』と言いながら注いでくる娘もいて、数の差でその辺りを静止できない。その前に次の質問や反応が飛んでくるのだ。

メリアの方は、貴族本人や、見たところ『マグディスの周囲より一段低いと思われる』貴族の娘、あるいは貴族の息子などと会話していて、ヘルプも期待できない。


(…ちょっとずつ見えては来た。)


酔いに耐えつつ、何とか失礼の無いよう返答をしながら、マグディスは考える。


(まず、これは向こうのチームプレイだ。全部仕組まれてると思った方が多分正しい。メリアは多分、引き剥がされたんだな。)


「マグディス様、どうかなさいましたか?ささ、お酒をどうぞ。」

「ああ、ありがとうございます。今後の予定を確認していたのです。」

「そうだったのですね。今晩は王城に泊まられる予定でしょうから、お忙しいのでしたら尚のこと、今日こちらに来ていただけませんか?」

「いえ、今日は今日でやることもありますので。余裕の無い生活を送っておりまして。不甲斐ないですね。」

「まあ、マグディス様は謙虚なのですね。ますます尊敬してしまいます。」


ずいっと近づいてくる娘にたじろぐが、後には下がれない。後ろに下がれば別の娘にぶつかってしまう。

周囲の娘はマグディスの話に騒ぐ程度だが、『狙い』はそのアクシデントだろう。そこをきっかけとして、お詫びのついでに家に引き込まれてもおかしく無い。


(ということは、正面のこの娘が多分最も位の高い貴族の娘なんだな。ダンスをしろとは、この娘のプライドを傷つけないように、『英雄に1番近づいた』という実績を与えろということか…。)


「その、今晩しなければならないことというのは何ですか?」

「昨日の練習試合を見ていただいたのならお分かりかと思いますが、私の剣技はまだまだ未熟でして。サバル伯爵にあっという間に追い詰められてしまいました。せめて戦争でもっと凌げるように、絶えず訓練をしなければならないのですよ。」

「あらまあ。そういう勤勉さがマグディス様を支えていらっしゃいますのね!でも、酔った状態では難しいのでは?」

「実は、そういう時は魔法で治療しているんです。」


地球の現代医学上であれば、いくら酔いを覚ましたとしても、アルコールが入った状態でのトレーニングは体に悪影響があるだろう。

しかし、ここではそんなことは関係ない。


「まあ…!流石でございますね!でも、休息も時には必要なのではないですか?私の屋敷であれば、ゆっくりした環境を提供差し上げられるかと。王城では何かと人の動きも多いでしょうし。」

「お言葉はありがたいのですが、昨日はあの後休ませていただきましたし。」

「しかしあの試合は大変でしたでしょう?もう少し休んだとしても、目くじら立てる者もいらっしゃらないでしょう。」

「ですが、だからこそ自分でやらねば、どうしても怠けてしまいますから。」

「努力家ですのね!英雄と呼ばれるだけはありますわ。ただ、休息があった方が力は強くなると聞いているのですが、違うのでしょうか?」


(しぶといな…。)


非常ににこやかで、影を感じさせない笑顔を保つ娘。マグディスにとって、顔や体の好みがどうというよりも、むしろ貴族の娘というだけでほぼ同じものに見えてしまう。

彼女らに囲まれチヤホヤされることは、浮ついた気持ちにならない訳でもないが、かといって譲れない一線を破る気もない。


「良いじゃ無いですか、時には休んだって。私、マグディス様のこともっと知りたいです。」


そう言ってマグディスの腕を取る娘。

振り払うか悩むよりも前に、


「ちょっと良いかしら?ほらマグディス、食べ物持ってきたわよ。」


メリアが割り込んだ。手に持った皿の上にパンや肉が乗っている。


「あ、ああ。助かった。ちょうどお腹が空いてたんだ。」


そう言って皿を受け取り食べ始めるマグディス。


「お久しぶりですメリア様。ご機嫌麗しゅう。」

「久しぶりね、ジュミィ。ただ、今のはいただけないわ。今のマグディスは男爵相当かつ外国の要人よ?それに手を出しては、外交問題になるわよ?」

「いえ、合意の上であれば問題無いはずですわ。ねえ、マグディス様?」

「…悪いが、こんな俺でも許嫁がいるからな。その誘いに乗ることはできない。」

「でも、その許嫁さんを、マグディス様は本当にお好きなのですか?」

「…確かに、そいつは貴族の娘でありながら、1人で出歩いたり、危険を感じたら容赦なく魔法をチラつかせたり、非常識なところが多い。」

「ちょ…、」

「しかも人を簡単に振り回し連れ回すし、休む間もない。いちいち偉ぶるし、それでいて繊細な部分も多くて、付き合っててめんどくさいと思うよ。」

「ちょっと!」

「まあでも、俺は鍛治がしたいだけの人間だからさ。そういう相手が許嫁じゃないと、多分上手くいかないんだと思う。なんだかんだで今の関係や距離感が気に入ってるんだ。俺から手放す気は無いよ。」

「それは、本心ですか?」

「ああ、そうだよ。」

「そうなのですね…てっきり、弱みでも握られているものかと…。」

「確かに、その勘違いも理解できるかな…。」

「ちょっとマグディス!?アナタはどっちの味方なのよ!!?」

「んー、強いて言うならヘムト家の味方、かな?」

「だとしても、こんな場所でそんな話しないでよ!皆聞いてるのよ!?」

「メリアはそう言うけど、割とこの辺りの皆それくらいの認識なんじゃないか?ほら、皆頷いているし。」


周囲、というか王の周辺まで含めて、話が聞こえていたあたりまで、小さく頷く人が多数いた。

この場合、頷いていない人は、『同意しないであげよう』という優しさを見せている可能性が高い。

メリアは凹んだ。


「どうしてこうなるのよ…。」

「ま、これも日頃の行いだろ。見直す良い機会なんじゃないか?」

「引き起こしたのはアンタでしょうが!」

「ふふ、あはは。」


ジュミィという娘から笑い声が漏れる。


「ごめんなさい。本当に仲が良いのですね。」


その声に呆気に取られる2人。


「メリア様は、今マグディス様がおっしゃったような噂が貴族の間で広まっていますので、皆『マグディス様は騙されているか、弱みでも握られているのでは?』と考えていたのです。まさか本当にお似合いとは、失礼ですがおそらく誰もいなかったかと思います。」

「まあでも、実際はそう悪くない関係なんだ。」

「ええ、ええ。よく分かりました。ですが…、」


ジュミィはチラッとメリアを見やる。


「なら、側室は空いていますのね?」

「「は?」」


またも呆気に取られる2人。


「ちょ、ちょっと!ジュミィ、アンタは伯爵家の娘でしょ!それで側室なんて親が許さないでしょうよ!」

「私は昨日の練習試合でマグディス様の凄さを目の当たりにしました。剣技で競り負けていても冷静に勝利を掴む姿や、勝利しても過度に騒がず謙虚に振る舞う姿に憧れました。だからマグディス様さえ良ければ親も説得しますわ。それこそ…メリア様よりはまともな手段でしょうが、強硬手段も場合によっては使おうと考えてますわ。」

「っ…、そ、そこまで…?」

「この周囲の皆さんも、昨日のマグディス様に感動して、狙っている方もいるのでは無いでしょうか?」


満面の笑みで首を傾げるジュミィ。吹っ切れた会話をしているからか、今までよりもさらに自然な様子に見えた。


「俺自身のことをそんな風に思ったことは無いよ。買い被りすぎだ。それに、そういう気持ちは他のものを見たりすればすぐ変わっていくだろう?」

「ふふ、そういうことにしておきましょうか?そうですね、でしたら、私の気持ちが変わらないうちに、踊っていただけませんか?」


既に会場では食事が引き下げられている最中であり、ダンスの場が整えられ、演奏家達も準備を始めていた。


「…、なるほど。そういうことなら、喜んで。」


少し悩むそぶりを見せつつ応じるマグディス。この辺りは、どちらかというとパフォーマンスである。

飛びつくように同意するのは、今までの流れから言っておかしいが、かといって拒否して良い訳ではない。

そのため、少し間をおいていた。


「…。」


なお、若干放心気味のメリア。

マグディスとジュミィのダンスについては問題なく思ってはいるが、先ほどの諸々とジュミィの気持ちに頭の整理が追いついていない。


「お酒でもいかがですか?メリア殿。」

「…そうね、いただくわ。」


声をかけてきたのは高位貴族の息子だった。


「ジュミィ殿も言っていましたが、マグディス殿と仲が良いのですね。」

「本当にそう思います?」

「ええ。以前のように人を寄せつけない様子から随分変わりましたので。きっと彼の影響なのでしょう。」

「そこはそうかもしれないですわね。」

「それだけ、お互いに心を許せて、何を言っても大丈夫と思わせる相手ということでしょう。羨ましいほどですよ。」

「…今のを見てても羨ましいですか?」

「私にはそこまで話せる相手は、残念ながらいませんね。多くの貴族はそうだと思いますよ。」

「ふーん…、そういうものでしょうか。」


酒に身を任せつつ、適当に会話するメリアだった。


「マグディス様、ダンスは大丈夫ですか?」

「習ってはいますが、得意ではありません。」

「ふふ、ではゆっくり踊りましょうか。」


ゆったりした音楽と共に、広く取ったスペースに入り踊り始めた2人。


「つっ…。」

「おっと、お気をつけて。」

「ありがとう。」


少しバランスを崩したところでジュミィが支える。


「ふふふ。」

「どうしました?」

「いえ、剣技ではあれだけお上手ですのに、ダンスだとこうなんだなと思いまして。」

「いや、お恥ずかしい。」


既に素を出した後だからか、屈託なく笑うジュミィに、マグディスは赤面した。しかし、実際にダンスが下手なのは事実。赤面はその恥ずかしさから来るものと誤解されただろう。


「いえ、私としては嬉しいですね。」

「そうなのですか?」

「ええ。英雄と呼ばれるような殿方でも、ダンスが上手な方が好みという女性は多いと思いますが…例えばですが、剣技はそれなりでもダンスが非常に上手い方だとどう思いますか?」

「…なるほど。そのダンスの練習時間を、もっと剣技や訓練に費やせと思うかもしれませんね。」

「はい。実際には得意・不得意がありますので、練習が少なくともダンスの方が上手な方はいらっしゃるかもしれませんが、ほとんどの方はそうではないでしょう。」

「そういうことですか。皆さん、普段からそういうことを考えていらっしゃるのでしょうか?」

「いえ、ダンスはあくまで友好の場ですから。」

「そうでしたか。私たち以外での踊っておられる方が多いので、気になりましてね。」

「あの方達は、ある意味どのような場でも踊っている方々ですね。」

「というと?」

「いつも誰と結婚するかを探っている、そういう年頃の方々です。なので今回のパーティーも、貴族が集まる良い機会だという認識でしょう。メインが誰かなどあまり関係ない方々ですね。」

「はあ、なるほどですね。」

「我が国の貴族社会は、どのような後継者を用意できるか、その一点が重視されすぎている気がします。まるで私達にはそれ以外の価値が無いみたいに。本当はもっと、それこそマグディス様のように、今できることを着実におこない、自分で成果を出すべき。そう思っていました。」

「…いました?」


風向きが怪しくなってきたと直感が囁いたマグディス。

ついおうむ返しをしてしまった。


「はい。マグディス様を見ていると、『このような方を生み出すために』そういうことが必要なのだと思えます。」


それを聞いて、踊りつつ考えるマグディス。ジュミィの言うことは間違ってはいないように聞こえる。聞こえるが、それはマグディスの気持ちからは遠かった。


「少なくとも、私はそこまで立派なものじゃ無いですよ。平民上がりどころか、孤児ですからね。それこそ『住んでいる場所が違う』といつも思います。」

「そうなのですか。」

「孤児院にいた小さい頃、1人ヒュム族で孤独な身であったためヘムト領内を歩き回り、危険なことにも手を出しました。幸い、それは神父様やヘムト様の対応で事なきを得ました。私が今こうして踊っていられるのは、ヘムト様を始めとする貴族様方が、私を見つけ、支援していただいているお陰です。決して私1人の力ではありません。そして…」


一度話を切って、ジュミィの目を真っ直ぐ見て言った。


「メリアもその1人です。メリアは決して貴女と同じ考えではありません。もしそうなら、既に誰かと結婚していたでしょう。私を支援してくれた皆様のおかげで、私は今ここにいます。その1人であるメリアを蔑ろにする貴女の言葉には、頷けません。」


マグディスが英雄となったのは、支えた皆の力があったから。縁という幸運があったから。

マグディスという『成果』だけを褒め、大事と思いもてはやすのは間違いだと言っていた。


「貴女は、今できることを着実に行い成果を出すべき、そう思っていたと言いました。そして今は、後継者を残すべきだと思っていると。私は、その2つは別にどちらが上ということはなく、どちらも大事だと思います。ですが、そのどちらでも大事なことがあります。それは、環境を整えることです。ヘムト様やレンディス公爵様が私に環境を下さったから、今があるのです。」


マグディスは、ジュミィを見つめる。ジュミィは考え込んでいるようだった。

ジュミィはマグディスの方を見返して微笑んだ。


「ですが、マグディス様はご自身の素質とたゆまぬ努力によって今があるのでしょう?でしたら、マグディス様の素晴らしさは何も変わりはしませんわ。だから…。」


曲が終わってお互いが直立に戻る。


「これから、マグディス様にたくさんお手紙を出しますので、必ずお返事くださいね。約束ですよ?」


そう言ってジュミィは去っていった。

マグディスはため息をつきながら、メリアのところに行く。


「まぅりぃす!すいぶんとたろしそうにしれたみらいひゃないろ!」

「…どうしたんだ?飲みすぎたのか?」

「ほうよ!」

「良いからほら、姿勢直せるか?」


そう言ってマグディスはメリアの背中を叩く。


「…何やってるのよ。」

「何って、解毒だよ。もう4回目くらいでもうすぐ魔力切れるから、もうあんまり飲むなよ?」

「私もよく自分の生活のために魔法使うから言いにくいんだけど…そういう魔法の使い方してるの私たちだけだからね?気をつけて。」

「そうなのか?こんなに便利なのに。」

「しかもアナタのは完全無詠唱で連発してるから、分かってる人が見たらかなり怪しいわよ。やめといた方が良いと思うわ。」

「そう言ったって、こういう場でひっそり使うには完全無詠唱じゃないと使えないだろ?」

「まあそうなんだけどね…。」

「そんな話は置いておいて、約束通り踊らないか?しないと周りの目もあるしな。」

「………そうね。おかげで酔いも覚めたし。終わる前に踊っておきましょ。」


とりあえず踊り始める2人。

笑顔で仲良くという感じではなく、普通の表情という様子だった。


「それで、どうだったの?ジュミィは。」

「好きになれないということを伝えたつもりだったけど、ダメだった。押し切られたよ。」

「…そうだったのね。そう言えば、クレード家はサバル家と同じで、有力な相手なら正妻側室問わず嫁に入れるとは聞いたことがあるわ。」

「…クレード家?」


メリアがそれを聞いて躓いた。何事も無かったようにダンスを再開する。


「忘れたの?近衛魔術師団長のオルパ・クレード伯爵のことよ。」


今度はマグディスが躓いた。2人とも集中できていない。


「ってことは、ジュミィはクレード伯爵の…。」

「四女よ。正妻の2人目の娘ね。」

「…それがどうして俺に?」

「何故って、クレード家を継げるのは、多大な魔力量と良い属性、そして魔法のセンスがある人だけよ。」

「性格が悪かったり、物覚えというか…頭が悪かったりしたらどうするんだ?」

「その時は、代官が全てを仕切るらしいわ。あの二家は代官も相当な人じゃないといけないから、大変ね。」

「レンディス家はそういう決まりはあるのか?」

「頭と性格が良いのは必須ね。外交をするということは、国内のことをほとんど知ってるということだから。王の指示との連携も大事だし。まあ、嫁入り先に求められるのは、どちらかというと政治的な繋がりでしょうけど。」

「ふーん…。」

「あの二家は領地を持たない貴族の中での最高位の、4つの伯爵家のうちの2つよ。ちなみに残り2つは経済と政治のトップね。で、まあその四家は国家からのかなり高い俸給で運営されているらしいわ。そのお金で家を維持しつつ、優秀な後継者を育てて次に繋げるのが仕事ね。」


国家運営の貴族家というところだろう。

領地を運営する忙しさは無いが、その分求められる能力はトップクラスとなっているようだ。


「実力主義みたいだな。…ということは、正妻の息子とかでも簡単に貴族にはなれないから、後継者争いが大変なことになっていそうだな…。」

「そこで英雄マグディスの登場って訳ね。近衛魔術師のクレード家は当然狙ってきたし、マグディスは剣も使えるからサバル家も狙ってくると思うわ。」


(…まあ、ジュミィは本当に惚れたみたいだったけど。)


メリアは知り合いの豹変ぶりに驚いていた。

クレード伯爵からはマグディスを結婚相手として提案されてはいたのだろうが、それでも詳細な情報、すなわち魔法具の性質や無属性の魔力については伝えていないはずだ。それであの反応なのだから、本当に凄まじい想いを感じていた。


「…俺はそんな気は無いぞ。」

「断り続けても角が立つわよ。時には諦めも必要ね。」

「…そうだな、ヘムト様の顔もあるし。」


下手に『ヘムト家は懐が狭い』と思われても困ってしまう。それ以外にも、外交的あるいは輸出入に関してのトラブルも避けたい。マグディスが今思いつくのはそれくらいだが、もっと色々あるだろう。


「メリアはそれで良いのか?」

「私に聞いてくるなんて、どうしたの?弱気ね。」

「…そうだな。正直、参ってる。」

「私はそこまで興味がないわ。アナタが決めてよね。」


はあと小さくため息をつくメリア。


(『諦め』なんだろうな…。)


メリアが『興味がない』というのは、強がりかもしれない。メリアはマグディスよりも多くを見てきたはずだ。ジュミィのような、貴族の権威を笠に着た『押しかけ女房』のケースもよく聞く話だっただろう。

しかし、そういう意味ではマグディスの立場も相応に弱い。男爵位と同等と言われようとも、伯爵家の正妻の娘では同等以下にしかならないと思われた。

おそらく今日、王が男爵位相当と宣言することが分かった上で、ジュミィはマグディスに近づいてきたはずだ。


「すまない。一旦踊って、後は部屋で飲みなおすか。」

「そうね、それが良いわ。」


何かを振り払うかのように2人は踊り、そして夜は更けて行った。


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背景紹介40「マグディス・ヘムト その2」

幼少期の記憶こそ無いが、それでも過去、様々な環境を体験してきた結果、今の境遇がどれだけ恵まれたものかがよく分かっている。また、貴族たちの忙しく厳しい実態にも触れており、その結果傲慢さは見られない。

『現状は過剰に裕福である』という意識から、もう少し落ち着いた環境でゆっくりしたい気持ちが強くなっている。

しかし、周囲はそれを許さないようだ。

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