3 新たなる魔法剣(7)

「凄かったわね、マグ君。もうこんなことができるだなんて。」

「キャロット姉さん、帰ってきてたの?」

「ええまあ、行ったり来たりしているからね。」


そう話しかけて来たのは、ヘムト侯爵の愛娘、キャロット・ヘムトだった。彼女は近くの領地の家に嫁ぐことが決まっており、今はその準備段階だった。


「マグディス君こんにちは。挨拶が遅れて済まないね。」

「クワルドさん、こんにちは。いえ、人も多かったですし。…結婚の準備、大変そうですね。」

「ははは。確かに大変だけど、君の方がもっと大変になるよ?ウチはほぼ身内だけで済むけど、君の結婚は国を超えてだし、しかも場合によっては大公爵様や国王様が来るかもしれないからね。」

「うぅぇ。考えないようにします。。。」

「しかしまあ、レンディスお嬢様のことで困ったことがもしあったら相談に乗るよ。あんまり長くは居ないけどね。」

「ありがとうございます。百人力です。」

「そこまでかい?まあ、もし何かあれば言ってね。」


そしてキャロットと一緒にいたのは、ディアス伯爵家の一人息子クワルド・ディアス。精悍な顔つきでドワーフ族にしては高身長という、ある意味で稀有な存在だった。

この2人、特にキャロットは、以前はよくマグディスに教育をしてくれていた先生でもある。歴史や文化、帳簿など基本的な部分をマグディスが網羅できているのは、この2人の功績が大きい。


「マグ君には良いものを見せてもらったわ。ギルバートおじ様もそう思うでしょう?」

「おう。ワシも道具作りに携わる者として、負けらんねえなと思っとったとこだわ。」

「おじ様のは、道具としての完成度は高いけど、魔法具じゃあ無いでしょう?」

「そりゃそうだが、マグディスのもちゃんと作ってあるからあんな事ができるんだろう?これからも手は抜けんぜ。」


親方もやって来て会話に加わる。特に中身も無いような話が、マグディスを安心させてくれた。


しばらく会話した後、そこにヘムト侯爵が声をかけた。


「マグディス、来週にはオルダンドルフ大公爵領に行ってもらうぞ。叙任式があるからな。」

「俺も同行することになった。部下を隊長が護衛というのはよく分からんが…まあ、向こうには侯爵様は行かないという話なのでな。メリア様もいらっしゃるが、大公爵様へのご挨拶にも必要だとのことだ。よろしくな。」

「私は他の部下の指揮がありますのでこちらに残ります。お気をつけて。」


どうやら隊長はついて来てくれるらしい。副隊長はお留守番のようだ。


「お前は現時点だけでもかなり目立ってしまった。どんな奴がお前を狙ってくるか分からん。気をつけて行ってこい。そして無事に帰ってこい。分かったな。」


それを聞いて、マグディスも気を引き締め直した。


「分かりました。無事に帰れるよう準備します。」


その後は解散となり、皆それぞれの予定に戻って行った。

その日帰宅したマグディスは、しっかりとミスリル製魔法剣の再調整を行った。


その顔は、少しばかり笑っているように見えた。


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背景紹介21「地属性魔法」

土を動かすことが主体の魔法。河川の工事や農作業に、あるいは建物の建築にと生活に幅広く活躍する。戦争面では壁を作る防御の他、城壁を駆け上がるための坂の生成などの補助にも活用でき、利便性は上々。

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