3 新たなる魔法剣(5)

「あの時の炎が出るんですかね…。」

「あの時は、魔力遮断結界を使っていた上に、今回はミスリル混じりだからな。どこまでデカくなるか分からんぞ。」

「ほら、よく見ておいてくれよ、メリア。」

「魔法の第一人者としては確かめなきゃならないんだけど…怖いわね。」

「あら、マグ君の魔法なら大丈夫よ。こっちに被害は出ないわ。」

「相変わらずだね、ハニー。僕もちょっと怖いかな。」

「ワシは楽しみじゃな。1発デカいのかましてくれや!」


様々な声が飛び交う中、マグディスは集中する。

(あの時は必死すぎて、同じことを繰り返すことが出来るかどうかもよく分からないな…。)


あの時を思い出す。


マギア族軍団長の、自分を真っ直ぐに殺そうとする視線を。

その恐怖の中、必死に掴んだ剣を。


「……」

「行けるか?」


ヘムト侯爵の言葉に無言で頷く。

覚悟を決めた。


「行きます。」


直後、マグディスの手から魔力が滔々と溢れ出す。

その魔力は、剣の柄の内側へと余すことなく流れる。


「なんて量の魔力…!!?」


集中は切らさない。

芯のミスリルを伝い、剣尖から魔力が魔法となって飛び出した。


炎。


ただただ一筋の炎が天まで伸びる。


自分たちが見ている世界を絵に描いて、最後に赤一色で縦に塗りつぶしたような炎。


「ふむ。ここからでは、どこまでの長さがあるのか確認できんな。」

「これは、なるほど我が国が丁重にもてなす訳ですね…。」


貴族2人の会話で、全員の意識が戻ってきた。


「ほら言ったでしょ?マグ君の魔法なら危険は無いわ。」

「ハニー…、それでも肝が冷えたし、むしろこれからもあんな魔法があると言うだけで怖いと思うんだけどなあ。」

「ガッハッハ!やるなあ!ワシももっと良い道具を作れるようにしとかなきゃならんな!」

「…今の、大規模魔法クラスだったよな?マギア族でも100人以上で行使するという話だよな?」

「落ち着いてください隊長。ですがそうですね、仰る通りの筈です。それを1人でこの短時間でできるようになるとは…。」


尚、メリアだけはいまだに口と目を大きく開けて固まっている。


「隊長、この前の戦争でもこんな魔法だったのかね?」

「いえ、私の記憶では、10人分くらいの長さで、上が見える程度には短かった筈です。」

「ふむ。となると、これは相当な業物と言えそうだな。」


ヘムト侯爵はそう言うと、メリアの方を向いた。


「メリア嬢、少しお聞きしたいのだが…、メリア嬢?」

「……っ、は、はい、なんでしょう?」


我に返ったメリアは、やっとの事で返事を返した。

切り替えるために無理をしている様子である。


「我々は魔力が少ないから不可能なのだが、貴女なら先程の魔法は再現できるだろうか?」

「そうですね…多分できると思います。」

「うむ。では試してみてくれるかな。」

「…わかりましたわ。」


魔力喪失によりへばっているマグディスから、メリアは重そうに剣を受け取り、掲げると、同じような光景が再現された。

ただしメリアは、その後も魔力は残っているのか、不機嫌ながらも元気そうであった。


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背景紹介19「火属性魔法」

攻撃だけでなく、冬の暖や料理、洗濯物の乾燥、モノづくりへの活用がされている。『火を出す』というただ一点に特化した魔法で、魔法の種類が比較的少なく、応用の幅が狭い。

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