2 マグディスの日常(5)
訓練は走り込みから始まり、筋トレと集団での行軍練習を経て最後は1対1での模擬試合となる。
各項目において著しく悪い、または輪を乱す場合には罰としてトレーニングの追加がある他、模擬試合で負けてもトレーニングが追加される。
マグディスはそんな追加トレーニングの常連だった。
種族が違うため筋力量が根本的に異なるのが原因で、本人はそこまで悪くないと思われる。
「ぐへー…。」
追加の腕立てにも慣れては来ているが、辛いものは辛い。
「今日は1勝できたわね。」
終わり際になって、メリアが声をかけてくる。
「相手は新人だったからなあ。力任せって言っても押し切るには力が足りないから捌けるし、後は隙に打ち込めれば勝てる。…口で言うのは簡単だけど。」
「じゃあ、せっかく勝ったんだし、ご褒美くらいあげるわ。【我らが天の神、地の神、人の神に祈り奉る。我らが血に与えられ賜う癒しの術、ここに顕現す。ーーー鎮静(ストア)ーーー】」
そうメリアが唱えると、マグディスの痛みが引いていく。ただし体の動きの鈍さはそのままだ。
「こんな魔法も使えたんだな。」
「回復魔法も無属性魔法だから、普通は最初にそれを教わるものよ。私がこっちに来て最初に教えるのが『魔力遮断結界』っていうのがおかしいのよ。」
「で、この魔法は…。」
「お察しの通り、軍隊が訓練の後で使うのが普通と言われている魔法ね。症状を和らげるだけで治したりはしないの。治しちゃうと、訓練の効果が弱まると聞いているから。」
筋肉に負荷がかかり、断裂した部分がより大きく強くなる。地球上であれば『超回復』と名前がついている。この世界では特に名はない。
「そういうもんなんだな。」
専門外ゆえ、マグディスは安直に信じた。
「動けるかしら?そろそろ昼食の時間よ。ヘムト様のところに行きましょ。」
「ああ、分かったよ。…本当に痛くないんだな。」
「私の魔法を何だと思ってるのよ。」
そんな中身のない会話をしながら、ヘムト本家の屋敷へと向かう2人だった。
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背景紹介12「マギア族」
成人の身長は190〜230cmほどでかなり高い。身体能力も非常に高い上、魔力量もかなり多いく、ほぼ全員が上級魔術師クラスの魔力量を誇る。しかし、非常に利己的かつ暴力的で残忍な性格の者ばかりで、集団行動も苦手。結果として計画的な街づくりも難しく、寿命は120歳程度であるものの、若くして命を落とすことが多く、種族の人口は多くない。
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