14年目のリスタート
色葉みと
14年目のリスタート
これは今の私に続く物語。暗黒の時代(自分史)と呼ばれる物語。
人生14年目の出来事である。
今から約3年前、私は毎晩のように泣いていた。静かに涙を流すこともあれば、感情を撒き散らして泣くこともあった。
その理由は、やりたくないけどやらなくてはいけないという考えにぎりぎりと縛られていたから。
やらなくてはいけないこと。それはお風呂に入ることと歯磨きをすることだ。
それぐらいならばやれば良いのでは? やればその悩みも解決するのでは? そう思った方もいるだろう。かくいう私もそれを理解はしていた。
だが、やりたくない。いや、できないと表現した方が合っているのかもしれない。
お風呂に3時間、歯磨きに1時間。これを毎日やらなければならない。
洗っても洗えてないような気がするし、お湯で流しても流せてないような気がする。
磨いても磨けてないような気がするし、さっき磨いたところでも磨いてないような気がする。
そんなこんなでとにかく時間がかかるのだ。
私も好きでやっている訳ではない。とにかく苦痛で仕方がなかった。
無理やりやることもできなくはないが、気力と体力のゲージがマイナスになる。そうなると、気分が大幅に落ちたり、眠過ぎて動けなくなったりする。これがとにかく辛い。
それなら気力と体力があるうちにやればいいのかもしれない。
だがここで、人間は学び続ける存在だということを思い出してほしい。
良いこと、嬉しいこと、楽しいことに至る道筋を学ぶように、悪いこと、悲しいこと、辛いことに至る道筋も学ぶ。
つまり、お風呂と歯磨きをする→気分が落ちたり動けなくなったりする→辛いという道筋を学んでしまったため、お風呂と歯磨きをやりたくなくなるのだ。
やらなければ、やりたくない。
やらなければ、できない。
やらなければ、……。
そのときの私はこの概念に縛られていた。
これが、涙として、感情として出さずにはいられないほどに苦しくて、辛くて、どうしようもなくて。
そんな日々は約1年続いた。
あるとき、お風呂を1時間弱で、歯磨きを10分程で済ませることができた。出来そうと思ってやってみたら本当にできた感じだ。
きっかけになりそうな特別な出来事はなかったと思うが、少しだけ変化したことはあった。
それは、私自身が、やりたくないけどやらなくてはいけないと思っている自分を認識したこと。
それまで気づきもせず、なんとなく過ごしてきた私にとって、その変化はとても大切なものであった。
やりたくないけどやらなくてはいけないと思っている自分もまた自分。きっと私の経験値となる。
初めて見回したせかいは夜のように静かで、大きな月といくつかの星が並んでいた。
人生14年目、
おちて、落ちて、堕ちて、いつか底に付いたとき。
そこにはのぼり道だけがあった。
14年目のリスタート 色葉みと @mitohano
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