58.公式イベント開始! セレモニーはシグ9ゲリラライブ!?


 その日の夜は少々アスミさんに引かれながらも、生き生きとした調合三昧に耽ることができ、現状での限界に近い出来栄えのポーションベースを完成させることに成功した。

 ハイポーション系も安定した品質のものを作れるようになるだろう。

 必要素材は温室で栽培してもらうようにも手配したし、しばらくは安寧だろう。

 そうしてその日は過去最高の一日のまま終了となり、私達プレイヤー達には再び多くの人がたっぷり遊び込める週末の二日間がやってきた。

 しかも本日は8月7日。前々から告知されていた公式イベントが開催される日である。

 この日、鈴はイベント開始時間の一時間前には、VRセットを身に着けてログインしていた。

 なんでも、イベントの開会式を任されているらしく、専用のサーバにログインして、待機していないといけないんだとか。

 私は鈴とアスミさんと三人でイベントを攻略することになっていたのだが、そういった事情もあって合流するのは開会式が終わった後、ゲーム内でということになった。

「う~ん……イベント開始まであと少しか……そろそろオープニングセレモニーが専用のサーバで始まるみたいだし、行ってみるかな」

 一応、セレモニー自体は参加するかしないかは自由なんだけど、鈴のゲーム内での晴れ姿が見れるんだもんね。

 ファルティアオンラインに唯一参加している身内として、きっちり目に焼き付けておかないと。

『お待ちしておりました、Mtn.ハンナ様。間もなく、公式イベントのオープニングセレモニーが開始されますよ。セレモニーでは鈴様たち、シグナル・9によるイベントの詳細な内容も説明されますので、見に行ってみてはいかがでしょう』

「うん、そのつもりなんだけど」

『さようでございましたか。セレモニー会場へは、いつものゲートではなく、あちらのゲートからログインいただけます』

「わかった。じゃ、行ってくるね」

『はい、行ってらっしゃいませMtn.ハンナ様。――あ、そうそう。ログインされる前に一つだけ、お知らせしたいことがあります』

「うん?」

 わざわざ呼び止めてまで知らせたいこと?

 なんだろ。

『イベント期間中は、イベントを存分に楽しんでいただきたいという運営の計らいにより、Mtn.ハンナ様他、一部プレイヤー様が持つクラス特性【敵多き身の上】は無効となります』

「本当!?」

『はい。また、これに合わせて、妨害クエストの発生判定も期間中は停止しますので、イベント期間中は敵性NPCの心配をなさることなく、心行くまでお楽しみくださいませ』

「やった、朗報だよナビAIさん!」

 あれが機能しなくなるだけで、どれだけ楽になることか。

 私はもはや、夢心地な気分になりながら、

 ナビAIに見送られつつ、私はセレモニー会場となっているサーバへとログインする。

 会場は、すでに多数のプレイヤーで犇めいていたのだが――

「あれ? 思ったより、少ない?」

「だな。多分、ランダムにいくつかのサーバに分けられたんだろ。おそらくだが、こちらからはシグナル・9へは声が届かないって感じだな」

「そっか……」

 思ったことをそのまま呟いてしまっていたらしく、すぐ近くにいるプレイヤーが私に話しかけてきた。

 いかつい外見をした、大柄の男性。

 革製の眼帯をつけており、その眼帯をはみ出すほどの三条の爪痕が走っている。

 まぁ、なんというか物語によく出て来そうな感じのアバターだなぁ、と考えて、ふと思いついたことがあったので確認してみる。

「もしかして、ユニーククラスだったりします?」

「おうよ。俺はゴリムラって言うんだ。引き当てたユニーククラスはアンコモンの『エルテマクス盗賊団頭領』ってやつだな。ま、ゲーム内で会ったらよろしくな」

 おぉう、もしかしなくてもそれ、私のユニーククラスと真っ向から敵対する感じのクラスだよね。

 大丈夫かな……ゲーム内では敵対する運命にある、なんてことになったらさすがに気まずい……。

「ゴリムラさんですね。私は……」

「知ってるぜ。リアル鈴ちゃんの双子の姉、プレイヤー名・Mtn.ハンナちゃんだろ?」

「知ってるんですか」

「知ってるも何も、俺は鈴ちゃん推しだぜ?」

「おぉ……鈴を押してくれて、ありがとうございます!」

 相手が鈴推しということもあり、そのまま意気投合することになった私は、一緒にオープニングセレモニーを見ることになった。

 私がログインして以降も、しばらくはプレイヤーたちがログインしてきており、鈴たち、シグナル・9の宣伝効果の高さがうかがい知れるほどであった。

「その関係からハンナちゃんのことも応援してたんだが……まぁ、クラスがクラスだからなぁ。苦労させられたぜ……」

「その……心中お察しします?」

「あぁ、心に沁みるぜその言葉……。つっても、今はクラスアップして、『傭兵団団長』になったんだけどな。ついでにクラスアップ特典で改名して、『ゴリアテ傭兵団団長』にしてやったぜ!」

 ゴリアテ……傭兵団? あ、それなら掲示板で見たことあるかも。

「もしかして掲示板でたまに見かける同じ名前のクランって……」

「おぅ。もしかしなくても、俺が立ち上げたクランだな。ったく、1か月半かけてようやっと手下どもを更生させることができてよぉ。それで、ようやっと大手を振るって相方やフレンドたちと正式にクラン立ち上げられたってわけさ」

「その……お疲れさまでした。私が言うのもなんですけど、楽しんでくださいね?」

「おぅ! そのために、手下どもを更生させたわけだしな。……お。ライトダウンしたな。始まるぞ」

「どんなセレモニーになるのか、楽しみですね」

 さりげなくとんでもない爆弾を投げられつつも、オープニングセレモニーが始まると察した私はゴリムラさんに倣ってステージに体を向けなおす。

 やがて会場が完全にライトダウンし、それからほどなくして――ステージ上のモニターでカウントダウンが開始された。

 それを見た会場にいる全員も、同じようにカウントダウンを始める。

「――10、9、8……――」

 カウントダウンが、どんどん進んで行く。

 それに合わせて、会場のボルテージもどんどん上がっていく。

「――7、6、5、4……――」

 もちろん、私も一緒にカウントしていく。

 傍らではどこから取り出したのか、ペンライトのような棒を振るいながらゴリムラさんも必死に声を張り上げてカウントをしていた。

 そしてついに――その時が、やってくる。

「――3、2、1――!」

 カウントが、0に――なった! ところで、なんとシグナル・9のキラーチューンである『Mine times』が会場内に流れ始めた!

 同時に、三回に分けてシグナル・9のメンバーたちがポップアップしてきた。

 最初は優しく包み込むような歌い方が持ち味の、ペール・ヴェールの三人。

 続いて年齢で言えば当初大学生以上のメンバーで構成された、ディープ・ライト。

 そしてシグナル・9の顔役で揃えられた、鈴たちシグナルジュエルがポップアップして着地したタイミングで、歌い出しのサビが始まった。

 ――うわ、いきなり飛ばしてきたなぁ。

 こんな始まり方されたら、もうあっという間に引き込まれちゃうに決まってるじゃん。

 この前の動画では一切触れられていなかったゲリラライブに、私達プレイヤーたちはセレモニー開始早々、ボルテージを最高潮に引き上げられてしまった。

 そして――鈴たちが見事に歌い上げ、アウトロまで曲が流れ切ると、私達は思いもよらなかったサプライズソングに大喝采を彼女たちに送ったのであった。


 ゲリラライブで引き揚げられたボルテージが冷めやらぬうちに、再び『Mine times』がBGMで流され始め、ほぼ同時に鈴が改めてマイクパフォーマンスを始めた。

『ファルティアオンラインプレイヤーの皆さん、今日も元気なシグナル、周りに振りまいてますかー!?』

『いえ~い!』

『今日は待ちに待ったファルティアオンライン初の公式ベント開催日! プレイヤーのみんな、忙しい中オープニングセレモニーに来てくれて、本当にありがとうございます! ファルティアオンラインの公式ページでイベントの事前情報を見たっていう人も大勢いると思うけど、これから、私達シグナル・9が改めてその詳細を説明していくから、しっかり聴いてってくれるとありがたく思います!』

 普段の印象とはかけ離れたマイクパフォーマンス披露する鈴。

 そのギャップがまた、彼女を押すファンたちからはとても高い印象を集めている。

 どうやら、セレモニーの司会はその鈴が任されているようだ。

『それじゃあ、早速――今回のイベントのテーマからいってみましょう!』

 どどんっ、とよくあるSEと共に、メインモニターの表示が切り替わって、今回ファルオンで行われるイベントのタイトルと思われる文面が表示された。

 イベントのタイトルは――『サーチアンドクエスト ~古代の遺産!? 狙われた幻のゴーレムのレシピ~』。

『わかりやすいタイトルですね。やっていただくこともおおよそこのタイトルの通り。プレイヤーの皆様には、街やフィールドでクエストを受注していただき、それを達成することでイベントポイントを稼いでもらいます!』

 へぇ~。

 イベントの内容は、とにかくクエストを達成して、それで稼いだポイントで何かしらの報酬が配られるというタイプのイベントかぁ。ありがちといえばありがちだよね。

 ただ、そのポイントを稼いで、それが何になるのかというのは気になるところだけど。

 それについては、ペール・ヴェールのペールレッド担当の子が、鈴に対して疑問を呈したことで話が進んで行った。

『クエストを達成してポイントを貯めるだけなの? ランキングイベントか何か? あたし、あんまりそういう重いイベント得意じゃないんだよねー』

『安心して、サヤカ。今回のイベントは確かに豪華なランキング報酬も用意されてるけど、マイペースな人向けの報酬も盛りだくさんなイベントなんだから』

『え? アスミさん、どういうこと?』

 う~ん、これに関しては私も同感かな。

 ランキングイベントって、なんかせっつかれるような感じがして好きじゃないんだよね~。

 一番最初だし、やっぱりあっさりさっくりいけるのがいいよね。

 さて、ペールレッド担当のサヤカさんとワインレッド担当のアスミさんのやり取りで、ランキング以外の報酬にも期待できるようになってきた。

 詳しい説明を求めるサヤカさんに、ルビーレッド担当のまどかさんがイベントポイントに関する詳細説明を始める。

『公式イベントの期間中は、すべてのクエストでイベントポイントとプレゼントコインの二つが追加報酬として与えられます』

『特別報酬が二つもあるなんて、太っ腹だよね』

『うんうん、その二つって何に使えるんだろうね』

 今度はディープ・ライトとペール・ヴェールのイエロー担当の子が、ぜひともその内容を聞かせてほしいとマイクパフォーマンスを披露する。

 それに応えるように再び説明を始めたのは、鈴となずなさんだった。

『イベントポイントは累計イベントポイントランキングに使用されるほか、スキルの成長促進に使うことができます。そしてプレゼントコインはランキング報酬以外のアイテムを受け取るために必要で、その受け取り方法は二通りあるようですよ』

『一つは、コインを単純に溜め続けること。これだけで、累計コイン枚数達成報酬がもらえちゃうのに、これとは別に、コインを消費して回すBOXガチャ形式の報酬まで用意してあるって浅木さんは言ってました。だから、プレゼントコインを稼いだ分だけ、よりいいアイテムが手に入るチャンスが増えちゃいますよー!』

 メインモニターでは、カプセルトイの什器にコインを入れてひねりを回し、報酬をどんどん受け取る様子が表示される。

 什器の中もどんどん減っていって、れっきとしたBOXガチャであることがアピールされていた。

『なお、期間中はイベント限定クエストも各地に追加されます。このイベント限定クエストは、通常クエストで得られる報酬が一切手に入らない代わりに、ポイントやコインが多めにもらえる仕様となっていますので、ぜひ受注してみてくださいね』

『通常のクエストと同じように、その地域の特色に合わせたものになっていますから、皆さんの持つスキルや装備に合わせて、ご自身に有利な土地をお選びいただけますよ』

 ふむふむ……狙い目はイベント限定クエストと。

 これは皆イベント限定クエストを血眼になって探すかもね。ポイント稼げるクエストは周回する人が多そうだし、注意しておいた方がよさそうだ。

『なお、イベント期間中は普段のランドマークのほかにもう一つ。黄色いマーカーがついたランドマークも各地に追加されます』

『このランドマークはイベント開始と同時に一時的に登録済みになっており、これによりスタート地点で選ばなかった、他のスタート地点候補の街にファストトラベルすることが可能となります』

『イベント限定ランドマークはもちろんイベント期間中しか出て来ませんけど、その後で通常のランドマークに触れればイベント終了後にもその街には継続してファストトラベル可能となります。まだ他の街に行ってないよって人はぜひ有効活用してくださいね!』

 おお……何気にすごいことしてきたな。

 これを機に、各街のプレイヤーとの交流を一気に加速させよう、という運営の魂胆が見えるようだ。

 私も、ロレリア以外の他の街に行ってみようかな。

『それから、イベントポイントに関してですが、こちらについては――えぇっと、会場の皆さん、大変お手数ですが、メニューを開いていただけますでしょうか』

 メニュー?

 指示された通りに、私はメニューを開いてみる。

『メニューを開きましたら、隣に表示されているステータスに注目してください』


『NAME:Mtn.ハンナ・ヴェグガナルデ Lv.40(51) ハーフ(人間+エンゼル)■ T_RANK 6

 CLASS1:ヴェグガナルデ公爵令嬢I■ Lv.55 CLASS2:薬師 Lv.28

 HEALTH:VT■:3450/3450 MP■:690/690 CP:710/710 SECURE XXX/↑140【GOOD or DENGER】

 CONDITION +

 BASE PHYSICAL -

 PPt.0

 ATK■:62 DEF■:79

 MAG■:141 MDF■:138

 DEX■:400 SPD■:73

 LUK■:109 TLK:330

 MND:340

 CLASS1 SKILLS

【側仕え召喚■☆:53】【護衛召喚■☆:49】【激励■:35】【短剣:7】【鉄扇■:28】【鞭:21】【傘:1】【フォーマル:13】【指揮■:37】【淑女(公爵)■☆:54】【貴族■:49】【社交☆:23】【重圧■:37】【ダンス■:38】【散歩:17】【博識■:41】【裁縫■:1】【調合師:17】

 CLASS2 SKILLS

【魔力操作:21】【火魔法:16】【水魔法:12】【鎌:10】【作業着:1】【器用:26】【野草鑑定:20】【樹木鑑定:19】【薬剤鑑定:27】

 SKILLS SPt.7 -

戦闘:

【蹴り■:1】【支援特化■:46】

魔法

【雷魔法:14】【回復魔法■:30】【支援魔法■:40】【空間干渉:11】

補助

【麻痺無効:16】【気配察知:60】

生産

【調合:27】【料理師:7】

(控え 3)

【採掘■:1】【金工■:1】【木工■:1】

 EVENT SKILL SLOT EVENTPt.0/0

【スキル未設定】【スキル未設定】【スキル未設定】』


 昨日までのメニューのステータスと違っているところといえば、最下部にイベントスキルスロットと呼ばれるスペースが新たにできている点だろうか。

 私達がこれは一体なんぞや、と思いながら眺めている最中、なずなさんの説明が再び始まった。

『見てもらえればわかったと思いますが、イベント期間中は普通のスキル欄の下に、イベント用の特別なスキル欄が用意されます。ここにセットされたスキルにはイベントポイントを規定量注ぐことができ、これにより1レベルずつ任意のタイミングで上昇させることができるようになっています。ただし、一度スキルをセットするとイベント終了まで変更が利きませんのでご注意ください』

『すごい! つまり、好きなスキル、重点的に育てたいスキルのレベルをバンバン上げられちゃうってことじゃない!』

『これは……無条件でそんなことをしてしまって、運営さんは本当に大丈夫なんでしょうか』

『いえいえ、もちろんそんな都合のいい話はありません。なずなが言っていたように好き放題にセットできないという制限もありますし、実際にレベルを上げる際にも無条件ということでもありません。ちゃんと条件は用意されています』

 つまり、スキルのスロット数以外にも何かしらの制約があるということ。

 ディープ・シグナルのブルー担当ミズキさんと、ペール・ヴェールのブルー担当アカリさんがそうリアクションを取れば、それには鈴が対応する。

『あらためて説明いたしますが、イベント用のスキルスロットを見てもらえればわかる通り、ここにセットできるのは三つのみ。つまり、途中で変更することもできない以上、各自で本当に育てたいと思うスキルを、慎重に選んでセットする必要があります。

 そして、イベントポイントを注いで上げられるレベルの上限も、クラススキルであればそれぞれのクラスのレベルまで。通常スキルであれば、皆さんのメインクラス、つまりステータス上のクラス1ですね。このクラスレベルと同じスキルレベルまでと、上限が明確に決められています』

 つまり、クラス替えなんかをしたりしてクラスレベルが1に戻っちゃってる人とかは、当然このイベント内でもスキルレベルをバンバン上げていくことなど不可能、ということになる。

 通常スキルは、言い換えればクラススキルの範疇の外にあるスキル。つまり、取得や派生にスキルポイントを必要とする一方で、成長性にクラスレベルの縛りを受けないという大きな利点もあった。

 けれど、イベントポイントで一気にスキルレベルを100にしてしまえるのは、さすがにやり過ぎであると判断されたのかもしれない。

 なるほどね、先月の上旬、期末テスト明けの告知配信で浅木プロデューサーが『クラス替えはお勧めしない』と話していたのはこういうことになるからだったのか。

 会場内では、それに逆らって転職してしまった人達の悲鳴で阿鼻叫喚、といった感じになっていた。

『あーあー……私達の方でも、説明をし始めた時からいくつかモニターを開いて皆のこと見てるんだけど、皆の悲鳴が非常によくここにまで聞こえてくるよ……。やっぱりクラス替えしちゃった人はいたかぁ……。

 でも、そんな人達には救済措置も用意してありますのでご安心ください』

 お? あるんだ。

『皆さんの端末にも、そして運営側のサーバにも、実は一つ前に設定されていたクラスの情報が保管されています。イベント期間中はそれを用いて、一時的にですが転職時点でのレベルを受け継いだ状態で、前回のクラスに戻ることが可能となっているとのことです』

 鈴の説明を受けて、早速それを実行した人もいるのだろう。

 私が入っているサーバ内でも、そういった人達の歓喜の声と、それを受けた周囲の人の歓声で再び沸き立った。

『あくまでも、イベント期間内の救済措置ですので、イベントが終わりましたらまたクラスは元に戻ってしまいます。その辺りはくれぐれもご注意ください。

 それから、最後にスキル派生を行う場合についての注意点もあります。あえてスロットを1つ余らせておき、派生させたいスキルを育てて派生させてから派生先のスキルを改めてセットする。このようなことも実行自体は可能ではありますが、この場合派生元のスキルがセットされていたスロットはこのイベント中は潰されてしまいますので、あらかじめご了承のうえ実行してください』

 なずなさんがそういったところで、一通りの説明が終わったのだろう。

 メインモニターが、一旦ノイズが流れた後で、『イベント開始まであと――』というカウントダウン画面へと切り替わった。

 いよいよ、公式イベントそのものが、始まる時が来たのだ。

『それじゃあ、皆さん。いよいよイベント開始時間が近づいてきました。準備はよろしいですか?』

『セレモニー会場にいる皆さんはイベント開始時間になり次第、最後にログアウトしたポイントに転送されます。それまでしっかりと、私達のことを目に焼き付けておいてくださいねー!』

 まどかさんと鈴がそう言い終わったのと同時に、シグナル・9のみんなが一斉に片手を上に伸ばして、カウントダウンを開始する。

『イベント開始まで、10、9、8、7、6――』

 それに合わせて、私達も――

「5、4、3、2、1――」

『イベント、スタートぉー!!』

 そして、私は光に包まれた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る