嫌われたスタート
須戸
嫌われたスタート
「ちょっと
お正月。親戚同士の集まりのため、私たちは祖母の家を訪れた。
大人たちが居間でお酒を飲んで近況について語り合っている間、子どもの私たちは手持ち無沙汰だった。
「葵、暇」
「じゃあさ、ゲームしよ」
「何か持ってきたの」
「何言ってんの。昔からこの家にあるじゃん」
立ち上がり別室へと移動しようとする葵に、私はついて行く。
母が子どもの頃に遊んだのか、祖母が孫のために買ってきてくれたのかはわからないが、別室の奥に置かれているおもちゃ箱の中に、それはあった。
葵がおもちゃ箱の中から、ゲームの中身が入った箱を取り出す。一目見て、ああ、それかと気付いた。
ゲームというのは良いものだ。
年の差があっても、勝てるチャンスがある。これが例えば、腕相撲とか勉強とかだったら、中学生の私は、高校生の葵には全く歯が立たないだろう。
だから今も。葵より私の方がリードしている。このままなら、絶対に勝てる。
思わず、ニヤついてしまいそうになる。
あと少しでゴール。
サイコロを振る。出た目は三。
赤色のコマを動かす。辿り着いたマス目には、「スタートに戻る」と書かれていた。
よりによって、このタイミングで。
「あはは。こういうことがあるから、双六っていうボードゲームは面白いよね」
葵も同じマスに止まれば良いのに。
自分のコマを最初に置いたマス目に乗せる。そこに大きく書かれている「スタート」という文字が、恨めしいと感じた。
嫌われたスタート 須戸 @su-do
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