第26話 相棒と
日が暮れる前に三峰と別れ、依頼の達成のためにふらふらと歩いていれば、白蛇はいつものようにその後ろに現れる。この日はそのことにもなかなか気づかずにいて、白蛇は小さくため息をつく。
「・・・菱津。」
その声は、届いているのか。
「菱津、聞こえるか。」
最近、こんなことが多い。菱津はまだこちらを振り向かず、先を歩いていく。
「菱津。」
「あ、白蛇君!さっき、たまたま恭弥君に会ってさ。」
まだ返事もしていないだろうに、名前の呼び方も変えるのかと、この1000年近い年月において、一度として正しい肩書き、正しい名で呼ばれたことのない白蛇はため息まじりに、ふと意地の悪い事実を叩きつけてやろうと、青年を見下ろした。
「これだけ歳が離れていて、本当に関係性は成立できるのか。お前の実年齢や思考と、あの男のそれは全くの別物だろう。」
「同じ時を生きることに決めたんだから、問題にならないよ。記憶なんてどうにでもなるし、ほとんど忘れてしまっているしね。少なくとも僕は、恭弥とも吸血鬼君とも離れたくない。だから、なんとしても合わせるし、それをしたいと思っているよ。」
そんな話をしているところで、一軒の豪邸が姿を現した。周りは塀で囲まれていて、中の様子はわからない。
「ここなんだね。」
「・・・菱津、生きていたいのか。」
風に揺れることもなく、影よりも静かな白い青年を見上げ、ふっと笑う。
「死んでしまったら、これまで生きてきた意味がない。僕は、死にたくないよ。」
白蛇はその答えを聞き、目を閉じた。もう、共にいられる時間はそう長くはないだろうと、ずっと隣にいた美しい青年を見下ろす。
(幸せなのだろうか。)
その言葉の意味もわからないままに、屋敷へと入っていった。
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