第20話
朝方になって連れ帰った猫は、ほんの少しずつ、食事を摂り、三峰と菱津はひとまず安心し、いつものソファに落ち着いた。
「ごめんね、いきなり猫ちゃん押し付けちゃって。」
「いや、生き物は好きだし、・・・なんか勝手にスケジュール表ができているし、世話の仕方も書いてあったし、猫トイレから猫タワーからご飯碗まで買ってあったから、問題ないよ。」
絶対隠す気ないよな、と若干呆れながら紙を見せると、菱津もその筆跡を見てくすりと笑った。
「それは、なによりだよ。それじゃあ、僕は・・・」
「にゃあ」
「なぁに?僕にいてほしいって?・・・やだちょっと、威嚇しないで?地味に傷つくから!」
「うニャア!!」
「ねえ、その感情はなに?僕にいてほしいの?嫌いなの?」
「猫はほら、構いすぎるのを嫌う子もいるから。」
三峰はそうやって取りなしつつ、案外猫も嫌ってはいないのではと思う。菱津に対して態度が悪く、声も低く、目つきも鋭いが、帰ろうとするとそれは嫌なようで、引っ掻いてでも止めに入ったから。
「この子もしばらく心細いだろうし、君に用事がない時なら、いつでも来ていいから。」
「ありがとう、三峰。でも、この子が心細い、ねえ・・・なんか太々しい感じすらするんだけど。」
「気にしすぎだよ。ね。」
「にゃぁん」
甘えた声で鳴き、膝に飛び乗ってきた黒猫を撫でながら、ふと顔を上げると、菱津が面白くなさそうにこちらを見ていた。
「なんだよう、そんな甘え方もできるんじゃん。」
「多分、自分と同じ髪の色をしているから、ライバル意識でもあるんじゃないか?」
「ほう・・・」
美しい青年の膝の上で踏ん反り返って見える猫を見ていると、確かにそんな気もしてくる。
(三峰と吸血鬼君を独占しようなんて、いい度胸じゃないか?)
ジトっとした目で猫を見ると、相手もまた険しい目つきで見返してくる。しばらくそのまま見つめあっている(睨みあっている)と、先に猫の方が顔を逸らした。
「よし、僕の勝ち!」
「なんの勝負?」
「君の膝の上の利権争いさ。さあさあ猫ちゃん、負けたんだから僕の膝の上で我慢しなさい?そこは100年早いからね?猫又になった後九尾にでもならない限り譲らないからね?」
と、手を伸ばした瞬間に思い切り威嚇され、再び地味にショックを受けているのを見て、つれなくされるのにも理由があるなと、心底思うのだった。
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