第43話 温泉を探そう
夕食は、ドワーフたちがやってくる前に先にいただくことにした。
温泉は後で入ればいいということで、トロトロに煮込んだ牛肉をシチューに入れて、フワフワに焼いたナンが出てきた。
「ナン?」
「ご存じなんですか?」
「ええ、でも、カレーと食べるパンですよね?」
「はい。まぁカレー以外でもスープ系の物ならナンでも合いますよ。チーズでもいいですけどね」
そう言って厨房を指さすと、ナンを焼くための窯が見えた。
ドワーフさんたちの技術の高さが伺える。
様々な地域の技術を取り入れて、料理も作ることができるから凄いな。
「サラダとポテトもどうぞ」
「ありがとうございます」
「最後にワインです」
俺は目の前に置かれた食事に集中する。
サラダは、素材の味を楽しむようにドレッシングはかかっていない。
塩の味で楽しむようだ。
ポテトも潰されていて食べやすくなっている。
「ヤバっ! 肉はトロトロ、サラダは塩であっさりと素材の味と、食感がコリコリとしてシチューの濃さを緩和してくれる」
そして、ハッシュドポテトが、甘い中にもお腹を満たしてくれる。
シチューとの相性も良くて、美味しい。
「ハァー」
喉を潤すためにワインを手に取れば、スパークリングワインになっていて、炭酸が喉越しにあっさりとして美味しい。
火牛の旨さが焼肉以外にも味わうことができて、やっぱり調理の仕方一つ一つで全然変わるもんだな。
♢
翌日になって温泉を探すことにした。
温泉が火山から段々で伸びていることは間違いない。
ただ、温泉が流れる場所は、遠くなればなるほど地下深くなっていく。
それがどれくらいの深さにあるのか、そしてどんな流れで温泉が続いているのか調べる調査だ。
出来れば鉱夫の村まで真っ直ぐに伸びてくれていたら嬉しい。
「ローレ、君の腕をドリルにして地面を掘ることはできるかい?」
ローレは腕をハンマーや変化させることが前回の性能チェックで理解できた。
だから、それをドリルに変えて掘り進めることができないかと考えた。
ドワーフの村であるジゴクと、鉱夫の村の間に辺りから調査を始める。
火山から、温泉屋を真っ直ぐに降っていっていた。
宿もその流れで建てられていたので、俺はその直線をイメージして、ジゴクから歩いてきた。
魔物をサンドスケルトンゴーレムに任せて、ローレと一緒に調査を続けながら、進んで、半分だと思える場所で一度掘ってみることにした。
温泉の権利などは、世界で管理されているわけではないので、掘り当てることができれば、そのまま俺の物にできる。
この辺りは、ドワーフの宿で確認をとり、冒険者ギルドマスターにも問題ないと言われている。
世界を統べる人間がいるわけではないので、立場を理解している人たちに確認できたの、問題はないと判断した。
「さて、ロックが掘り進めてどれくらいで堀当たれるのか?」
しかも一直線に掘ったとして、温泉がここまで来て枯渇していれば問題はない。
「うん? おや、温泉か?」
じんわりと地面から水が滲み出てきたので、水に触れてみる。
「おっ、あったかい! 温泉かどうかはわからないけど、泉質を調べないと温泉とは言えないけど、とりあえず考え方は間違っていないな」
俺は、そのまま温泉の流れる脈を探しながら鉱夫の村へと戻ってきた。
日数にして三日ほどかかってしまったが、どうやら一番近くの温泉を見つけることもできたようだ。
「ふぅ、ここまで来ると、温度は下がって少し冷たくは感じるが、少しばかりのぬるさを感じることができる。少し深くまで掘って温度が上げられるか?」
ここまで掘ってきた温泉は全て塞いできたけど、ローレが居れば、温泉が掘れることは証明できた。
ただ、深さや組み上げる方法など、まだまだ問題が生じる。
それに安定的に枯渇させない方法なども勉強不足なところがあるから、ジゴクに戻ってその辺の調査は必要だな。
「ローレ、今回の調査は君がいてくれたことで随分と助かった。ありがとう」
「うん」
俺は何度もローレを誉めて撫でるようにしていた。
そして、ローレは口数が少ないが、他の美少女ゴーレムよりも理解力が高く感じる。精神的な成長が一番感じられるのだ。
それは、ローレ自身の性質である器用さや繊細さを加えたからではないかと思える。
他の美少女ゴーレムたちにも個性や性格はあるが、配慮や気配りはなかった。
「まるで人の子を育てるように、君たち四人を育てるのはとても難しいね」
美少女ゲームをしているように数値で四人の性格や能力などが見れれば、いいがそこまで便利な魔法は持っていない。
だから、手書きの紙に四人の個性や能力、出来ることなどとメモを作って違いを自分なりに研究レポートとしてまとめることにした。
美少女ゴーレム研究日誌と名付けて、今後の俺が彼女たちを育てるのに役立てる。
「さぁ、帰ろう」
「うん」
ドワーフの街に向かって歩き出す。
「主人」
「うん?」
「手」
「ああ、繋いでいこうか?」
「うん」
少しだけ、ローレから求めるような素振りも見せるようになった。
これは大いなる一歩だ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
どうも作者のイコです。
本日カクヨムコンテスト9 最終日になります。
他作品も含めて、たくさんの応援ありがとうございます!
結果は分かりませんが、皆さんに応援頂き、感謝ばかりです。
今後も話が区切りのいいところは投稿頑張りますので、どうぞお付き合い頂ければ幸いです!よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます