第41話 ロックゴーレムを連れて温泉へ

 完成したドワーフタイプのロックゴーレムを連れて、温泉へと向かう。

 砂と違って流れることもなく、木と違って湿気ることもない。

 鉄と違って錆びる心配もないので、温泉の調査ではロックゴーレムが一番の働きをしてくれる。


「ロックだと男みたいな名前になるから、ロックゴーレムだから、ローレにしよう。いいか?」

「うん」


 マッスルゴーレムを対していないので、声帯がないため頷いてゴーレム特有の空洞音で返事をしてくれる。

 だけど、なんだかその仕草が可愛くて癒される。


 さらに、温泉までの道のりは、他のゴーレムと違ってゆっくりのっそりなので、散歩をしている気分で久しぶりに、慌ただしい日常から離れたような気がする。


「ローレ。足元が悪いから転ばないようにな」

「うん」


 岩山を登って、いくつか風呂屋を見つけることができた。


 火山の上に行けば行くほど温度は高くなるそうで、一番下の温度が50度から設定をされていた。


 俺としては42、3度でも高いと感じてしまうので、50度は火傷してしまいそうだ。


 ただ、どれくらいの温度まであるのか調査も兼ねて、一番上のお風呂屋に向かうことにした。


「ふぅ、岩山は歩くと高いな」

 

 ここまでローレを連れてきたが、魔力消費は全く感じない。

 マッスルゴーレムを合わせた合成ではないので、そこまで大変ではなかったこともあるが、途中で疲れてゴーレムに乗せてもらったが、力も強くて、ゆっくりではあるが歩き続けてくれた。


「ここまでありがとうローレ」

「うん」


 街の最後まで来て、風呂屋見つけたので、温度を確認すれば100℃と書かれていた。地獄の湯と書かれており、さすがにここに入る者はいないようだ。


 そこから少し降ると八十℃。

 さらに降ると六十℃。

 六十℃近辺の風呂屋が多くて、ドワーフたちは仕事終わりに入りにくるようだ。

 お風呂に入った後は飲みにいくから、ここからがドワーフたちの時間ということになるのだろう。


 風呂屋は低くて五十℃、高くて百℃まで温度があるようだ。


「ローレ、温度を見たいから一緒に入ってくれる?」

「うん」


 一応、入れそうな五十℃の一番温度が低い風呂屋さんを選んだ。


 ドワーフたちにはあまり人気がないようで、誰もいない。


「いらっしゃい」

「あの、ゴーレムも一緒なんですが、いいですか?」

「ああ、料金はもらうけどね」

「はい」


 二人分の料金を払って、ローレと共に温泉へ向かう。

 洗い場に入ると、石作りのオシャレな洗い場が広がっていた。


「やっぱりドワーフの風呂屋だな。細部までこだわりが深い」


 建物も和風でオシャレな作りになっていて、お風呂も岩で作られた湯が張られている。


「ローレ、体を洗ってくれるか?」

「うん」


 器用さを試すために、体を洗ってもらうことにした。


「人の体はあまり強く擦ると痛くなっちゃうから丁寧にしてくれるかい?」

「うん」


 恐る恐る、ローレがタオルを掴んで、俺の背中を洗ってくれる。

 その手は丁寧に確かめながら洗ってくれるので、俺としても意外に気持ちいい。


「ふぅ、ありがとう。背中って自分で洗うの大変なんだ。助かったよ」

「うん」


 ローレの頭を撫でてお礼を伝えると喜んでくれた気がする。


「さぁ、入ろうか……。50℃なんだよな」


 俺はそっと手をつけてみれば、あまりにも熱くて手をすぐに引っ込める。


「ハァー、これは熱いな」

「うん」


 気づけば、ローレが肩までしっかりと浸かっていた。

 それを見た俺も足からつけてみる。


「よしっ!? アッツ!!!」


 足をつけた時点であまりの暑さで動けなくなった。

 仕方なく、足だけで我慢してしばらくして湯をでた。


「ローレは凄いな。体に触ってもいいかい?」

「うん」


 50℃のお湯に浸かっていたローレの体は熱くなっていた。


 女性っぽい見た目ではあるが、完全に外側は岩でしかないので、恥ずかしさはないが、触れさせてもらうのに何故か緊張してしまう。


 仕方なく、肩の部分に手を置いてみると熱くて、50℃で熱せられたことがわかる。だけど、これが、もっと熱い温度なら岩の中に保温してしまうから、熱せられた体ができるわけだ。


 俺たちは脱衣所に戻って、タオルで全身を拭いていく。

 ローレに自分の体を拭くように言ったが、どうしても背中の方は短い腕では回らないようだ。


「さぁ、温泉の体験はできた。今度は、この周辺にある温泉地を探して、鉱夫の村に温泉が繋げられるのか調査をしないとな」

「うん」

「その前に、ローレのマッスルゴーレムとの融合もしよう」


 この当たりの調査をするのには、ローレが一番適してくることは理解できた。

 他のゴーレムたちではどうして弊害が出てしまう。


 適材適所という意味で、ローレの進化は必要なことだ。


「それになんだか、ローレと歩いていると落ち着くな。温泉街をローレと歩くのが楽しみだよ」

「うん」


 宿に帰るまでの間、ローレの足元を考えて手を繋いで帰った。


 早速、宿の中に部屋に戻った俺はローレを完成させるために、マッスルゴーレムの作成に取り掛かることにした。


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