第40話 ドワーフ料理とロックゴーレム

 お風呂から上がった俺を出迎えたのは、独特な香辛料の匂いと胡椒の風味が強い香りがする。


 食堂は外部の人を入れていない様子で、泊まっているごく僅かな人たちでテーブルを囲んでいる。


「あっ、ヒースさんいらっしゃい」

「人が少ないですね」

「ふふ、ドワーフは基本的に夜遅くなまで仕事をして、夜から朝にかけてお酒を飲む習慣なんです。ですから、まだ宵の口である今の時間にくるお客様はほとんどいません。普段から仕事もしない飲んだくれか、このホテルに泊まっているお客様ぐらいなものです」


 なるほど、今日は俺の方が早く来たから賑わいを知ることはなかったのか、ドワーフの生活習慣と、俺の思っている常識が違うというわけだな。


「街の雰囲気が変われば、ルールや生活も変わるんですね」

「そうですね。さぁ、お食事の用意ができていますので、どうぞこちらへ」


 通してもらったテーブルに座ると、お鍋が置かれていた。


「お鍋?」

「はい。火鍋です。ドワーフ名物グツグツ石鍋なんですよ」


 熱せられた石の上に鉄板置かれて、その上に鍋が置かれている。

 その上で優しや肉が赤みのある鍋に入れられている。


「辛そうですね」

「辛くはあるんですが、ドワーフは熱いの、辛いの、濃い味が大好きなんです。そこにアルコールがあればなんでも美味しく食べられるので」


 そう言ってピッチャーでエールを持って来てくれる。


「レモン酎ハイも合うんですが、お風呂上がりはこっちの炭酸がいいかと思いまして」

「ありがとうございます!」


 早速半分ほどのエールで喉を潤して、拡張させる。

 その上で、火鍋から肉と優しをとって口に入れてみる。

 辛さは思っていたよりも、辛味よりも野菜やお肉の旨みが強い。


「お肉はファイアーバードとミノタウロスを使わせてもらっています。ファイアーバードの出汁が効いて、柔らかい胸肉が美味しいですよ」

「はい! 確かに弾力がありさっぱりとした肉に、火鍋の辛味が丁度いいです」


 そして、食べ進めるとミノタウロスの臭みがある匂いに肉の味わい強い。

 ファイアーバードの淡白な味わいとは対比して、肉としての甘味と臭みが美味しいと思えてしまう。


「ハァー……。これは美味い。辛味が喉に絡みついてくるから、エールが進む。ピッチャーでもらったはずなのにもうない。すみません。レモン酎ハイお願いします!」「はーい!」


 またピッチャーで運ばれてきたレモン酎ハイを片手に、俺はどんどん火鍋を進めていく。お風呂に入ったのに汗が吹き出してきて、それをレモン酎ハイが一気に冷ましてくれる。


 二杯目を飲み終わる頃には、レモン酎ハイを全て飲み干していた。


「ご馳走様です!」

「口が真っ赤になっていますよ。オジヤが作れますがどうされますか?」

「是非?!」


 俺は飛びつきそうな勢いでお願いして、火鍋にお米を入れて、そこにチーズを振りかけられた特製火鍋オジヤを作ってもらった。


「これは絶対美味いやつですよ!」

「ふふ、お水を置いておきますね」


 そう言ってピッチャーの水が置かれる。

 ここでは全ての飲み物がピッチャーで運ばれてくるようだ。

 お酒を大量に飲むドワーフさんたちからしたら、ピッチャーこそがコップ代わりで、他のテーブルでも同じようなピッチャーがテーブルに置かれている。


「ありがとうございます」


 大体お椀に二杯ほどのオジヤを最後まで食べ切って、俺は部屋へと戻った。

 部屋は個室で特別な鍵でしか開くことができないので、誰も入ることができない。


 そこで、熱にも耐性がある。


 ロックゴーレムとスケルトンゴーレムを合わせて強度を増しておこうと思う。


「アイアンゴーレムは騎士として力強さを求めたが、ロックゴーレムにはドワーフさんたちのような器用さが欲しいな」


 モッティは素早さと身軽さ。

 アイは力と頑丈さ。

 サンドは、変幻自在な体。

 

 なので、ロックには器用さと臨機応変な行動が取れる体制を多く持たせようと思う。


 そこでロックの骨格をドワーフの女性のように小柄で、器用なことイメージして生成していく。


 身長は140センチぐらい。

 手先を細かく動かせるように丁寧に作り上げる。


 ロックゴーレムはゴツゴツとした見た目だが、AIゴーレムを使ってドワーフの女性のような筋肉がありながらも丸みのある体型を目指していく。


「うん。こんな感じかな?」


 マッスルゴーレムを合わせる前に、骨格とイメージを保つために作ったつもりだが、意外に可愛くできた。


「マッスルボディーを入れていないから、柔らかさはないがそれでも十分にいい感じなんじゃないか?」


 触れると岩の感触がしているが、AIゴーレムが美少女の造形を作ってくれて、スケルトンゴーレムが土台として、指先を滑らかに動かしている。


 顔は、まだまだ手を加える必要があるが、これはありだな。


「うん。小柄なモッティとは違った意味合いで、身長は低いんだけど、なんだかしっかりとしたガタイには見えるな。四人ともそれぞれに個性を持たせることができたから、サンドは過量の余地はあるが、いい感じに進んでいる」


 ロックのプログラミングには、物作りができるように組み込んでもいいかもしれない。



 

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