第39話 ドワーフの街到着

 鉱山を超えて、山間を通り岩ばかりの道を進んでいくと、巨大な火山をバックに大きな街が作られていた。


 門は巨大で五メートルはありそうなほど大きな門と壁が作られている。

 山の上から見た時は立派な街が見えたが、近づいてみると門しか見えない。


「誰だお前?」


 門番をしていたドワーフに声かけられる? 髭が少ないから若い?

 ドワーフはヒゲの長さや濃さ、色合いなどで年齢を判別する。


 そのため、髭が短く、量が少なく、色合いも黒々としている彼は年若いドワーフだと推測ができる。


「俺は、冒険者ヒース。ドワーフの街であるジゴクに温泉があるって聞いてきたんだ。ぜひ、俺に温泉を見せてくれないか?」

「温泉? お前、変わった人間だな。まぁ冒険者として身分がしっかりしているなら通してやるが、街の中で変なことはするなよ

「もちろんだ!」


 俺は冒険者証明を見せて、街に入る入街関税を支払って街へと入った。


「おお! デカい!」


 門がゆっくりと開かれて、街の中が見えると山に沿って街が作られている。

 ドワーフは建築も自分で行うそうなので、家の形には似たような物ばかりではなく、様々な作りの建物が立ち並んでいて、技術力の高さを表すように街灯や道路の整備なども行われている。


「凄いな。まずは宿をとって、温泉の調査だな」


 食料はたくさん持ってきたけど、それでも拠点となる場所は必要だからな。


「すみません。宿ってどこにありますか?」


 俺は先ほどの門番に宿の位置を問いかける。


「うん? そこの道をまっすぐ行って左にあるぞ」

「ありがとうございます」

「おう、悪さするなよ!」

「わかってますよ」


 俺は、言われた通りの道を進んで、宿屋にたどり着く。


「すみません。泊まりたいのですが?」

「人間のお客さんだぁ。珍しいね」


 出てきたのは小柄な女性で、こちらも歳が若そうだ。

 ドワーフは基本的に男性で、身長150センチ。女性が140センチで大きい方の扱いを受ける。


 男性は髭で年齢を測るのに対して、女性は二通りの年齢を判断する基準がある。

 一つは、ドワーフの女性は還暦を迎えると男性と同じく髭が生えてくるので、老人? と呼ばれる年になると真っ白な髭を生やすドワーフ女性が多い。


 そして、もう一つは胸部だ。


 なぜか、大人のドワーフは胸が大きい。

 子供頃はそれほどなのだが、剛毛な髪質と、胸部装甲が特徴的な種族と言われている。


 一定の年齢になると全員が胸部装甲がビッグになり、歳と共に小さくなるそうだ。

 適齢期の女性は男性へのアピールが強くなるという傾向にある。


 そのため、受付をしてくれた女性は身長130センチぐらいで、胸部もそれほど立派ではない。

 そして、髪の毛は剛毛ではあるが、厚みは感じない。


「泊まることはできますか?」

「はい。大丈夫ですよ。一泊銀貨1枚で食事付きなら銀貨1枚に銅貨5枚です」

「それでは三日ほどお願いします。食事なんですが、お肉を持参していまして、それを使って何か作ってもらうことはできますか?」

「それは助かりますね。なんの肉ですか?」

「今の、手持ちはファイアーバードとバジリスク、ミノタウロスですね」

「ミノタウロス! そんな高級なお肉を!」

「ええ、鉱山の村に普段はお世話になっているので」


 相変わらずこの世界の女性はお肉が大好きだな。

 ミノタウロスのお肉を伝えると目の色が変わってキラキラと輝き出した。


「あっ、もちろんお店の方々にもミノタウロスのお裾分けで」

「いいんですか?!」


 物凄い興奮だな。


「はい。預けておいていいですか?」

「もちろんです! こちらで冷やしておきますね。お客様はどうしてジゴクの街に来られたんですか?」

「温泉を体験したくてきたんです」

「温泉?! え〜変わっているんですね。大人の男性たちが顔を真っ赤にして入る温泉は私は絶対入りたくないです」


 正直な子だな。


 だけど、噂通りの温度が高いようなので、警戒しておいた方が良さそうだな。


「今日は着いたばかりなので、汗を流したら食事にしたいんですが、いいですか?」

「はい。うちは温泉を覚ましたお風呂を作っているので、そちらをご利用ください。男女別々にしておりますので、お間違い無いようにお願いしますね。私、宿屋を営んでいますマリーと言います」

「店主さんでしたか、冒険者のヒースです。よろしくお願いします」


 俺は部屋の鍵をもらって、お風呂に入るために荷物をおいておく。


 ドワーフの宿屋は色々と作りが面白い。

 螺旋階段に扉の鍵もこだわりがあるようで、魔導具の鍵になっているので、登録している鍵以外では開けることができないようになっていた。


「細部までこだわりがあるんだな。ドワーフの街で食べる肉料理ってどんなんだろうな」


 俺は荷物をおいて、早速お風呂に向かった。


 お風呂は、そこまで強い香りがしない温泉の湯が、流し湯で湯船に流れている。

 しかも宿屋特製の湯船は広々としていて、ゆっくりとできる環境が作られている。


「ハァーいいな」


 自分で入れたロックゴーレムの風呂も良かったけど、こうやって少しドロッとした温泉特有の体が温まるお風呂は最高に気持ちいいと思える。


 絶対に、こんなお風呂を鉱夫の街にも作ろう。 

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