第38話 お風呂作り

 火山の近くに温度の高い温泉がたくさんあるって聞いたことがあるな。


 マグマの世界なら天然温泉があるんじゃないか?


  火山の下には、地球の深いところから上がってきたマグマがたまっているんだ。


  マグマからは熱い水や水蒸気、ガスが出ているんだよな。

 それが地中にしみこんだ雨水とまざり、地面にわいて温泉になるんだ。


「溶岩が流れているから、火山があるのはわかるから、それにちなんだ温泉を探しあてれば銭湯を作れるんじゃないか?」


 天然温泉の銭湯って贅沢だな。


 俺は早速、冒険者ギルドに情報を集めるために工房を開けて、久しぶりにハザマの街へとやってきた。


「ギルマス」

「おう、ヒース。久しぶりだな」

「はい。お久しぶりです」

「鉱山の街に工房を構えたんだろ?」

「はい。ゴーレムのスキルを研究したくて、ある程度の目処が出来たら、次の扉に向おうと思っています」

「そうか、男って奴はやりたいことをやるもんだ。まぁ最近は女の方がアグレッシブで強いがな。ガハハハ」


 ギルマスの相変わらずな雰囲気に懐かしくなりながら、俺は温泉について質問をしてみた。


「温泉?」

「はい。火山があるなら、温泉もあるんじゃないかって思って」

「あ〜、確かに、ここから少し離れた場所ではあるが、ドワーフたちが仕事の疲れを取るためにサウナじゃない。風呂を作っていた街があったな」

「ドワーフさんですか? うーん、鍛治師のマディスさんに聞けば、知っておられrますかね?」

「ああ、確かにマディスなら知っているかもな」

「ありがとうございます」

「おう、いいってことよ。お前には肉の提供をしてもらっているからな。ミノタウロスもありがとな」

「いえいえ」


 ミノタウロスとこれまでの貯金で、大きな建物を作れるぐらいの資金が貯まったので、それを使ってお風呂家を立てようとしているので、ミノタウロスを高価買取してくれたことは俺としても助かった。


 ギルマスに聞いた話を元に、俺はマディスさんの元へ向かった。


「おう、ヒースじゃねぇか」

「どうもマディスさん。ちょっとお聞きしたいことがあるんですがいいですか?」

「うん? お前のおかげで鉄の供給も再開されたからな。なんでも聞いてくれ」

「みんなで入れるお風呂を作ろうと思っているんですよ。それで、ドワーフさんたちが作った温泉がある街のことを聞きたくて」

「なんじゃ、そんなことか。ジゴク湯は普通の人間には入れんと思うぞ」

「ジゴク湯?」

「ああ、マグマの近くに焼けるほど暑くなった湯が沸いておってな。その熱いお湯に浸かるのがドワーフたちの間で度胸試しと言われておるんじゃ」


 あ〜、温度調整の概念はないんだな。

 火を得意としているドワーフたちだから、気にしないのか?

 だけど、ドワーフたちが入れるお湯があるなら、温泉を見つけることはできそうだ。


「それってどのあたりにあるのか教えてもらえますか?」

「うむ。構わん。もしも、お主が風呂を作るならワシにも入れさせてくれるならな」

「それはもちろんです」

「ならば……」


 俺はマディスさんにジゴク街の場所を教えてもらってた。

 ありがたいことに鉱山の裏側にあると言うことなので、鉱山の村によってしばらく家を空けることを告げる。


「お兄ちゃん! どこかにいくの?」

「うん。お風呂を作ろうと思ってね」

「お風呂?」


 不安そうな顔をするカイナちゃんに、俺はお風呂を作る話を聞かせる。

 今の俺がロックゴーレムでお風呂を作っても、大勢が入ることができない。

 何より、俺の魔力がロックゴーレムを出現させ続けていると消費してしまう。


 そこで、ちゃんとしたお風呂を鉱山の村に作ろうと思う。

 もしも、鉄が取れなくなったとしても、それを名産に観光地になってくれてもいいと言う思いがあることを話した。


「お兄ちゃんはそんなことまで考えてくれていたんだね」

「まぁ、どれだけの物が掘り当てられるのかわからないけどね」

 

 カイナちゃんに納得してもらって、そのことを鉱夫長に話すと、夫婦共々に頭を下げられた。


「ヒースさん。あんたには犯罪者集団から助けられただけじゃねぇ。街の守護をしてもらって、あんたのゴーレムが俺たちの護衛もしてくれている。どれかけの恩を返せばいいのかわからんぐらいだ。それに未来のこの村のことまで考えてもらって……」


 そんな大袈裟なことをいているつもりはない。


 むしろ、自分の好きなことをしているだけで、感謝されて俺の方が恐縮するぐらいだ。


「気にしないでください。俺は自分が楽しんでやっていることですから」

「そう言ってもらえるとありがたい。どんなことでもヒースさんの頼みなら聞き入れる。だから、絶対に俺たちのことを頼ってくれ」

「はい! ありがとうございます」


 エルシェンとは色々あったが、こうやって良い人たちに巡り会えている俺は幸せ者だと思う。


 何かして、何か嬉しいことを返してくれる。

 

 そんな当たり前のことが凄く嬉しいと感じてしまう。


 俺は鉱夫長に許可をもらって、温泉を引く準備をするために、ジゴク街へ向かって出発した。

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